火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
各地下水系の平均滞留時間及びマグマ起源成分量
完全混合モデルを用いて得られる各地下水系(図:地下水の採取場所及び,水系区分)の平均滞留時間,賦存量,帯水層厚,及びマグマ起源成分量を示します.
平均滞留時間のうち,黄色の値は1974年のトリチウム濃度(S1は長浜地下水の54±2TU,S4は東温泉の66±3TU,S5は坂本温泉の19±2TU;松葉谷ほか,1975)から得られたもの,黒字の値は1993年のトリチウム濃度(黒字)から得られたものです.同じ水系で平均滞留時間が異なっていますが,単純なモデルを計算に用いていることを考慮すると,よく一致していると言えます.硫黄島の主地下水流動系であるS1では平均滞留時間が約10年,硫黄岳周辺山麓のS2~S4では20年程度,そしてカルデラ外へ抜ける坂本温泉系のS5では約30年の平均滞留時間を持つことがわかります.
各水系の地下水流量は,面積と降水量から,蒸発散率を45%と仮定して算出しています.さらに,地下水流量と平均滞留時間から賦存量を,賦存量と面積から帯水層間隙率を50%と仮定して帯水層厚を求めています.
マグマ発散物の地下水系からの放出量(マグマ起源成分量)は,地下水・温泉水の化学・同位体組成から海水・天水・マグマ水の混合比を算出し,それと各水系の地下水流量とから求めています.