火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
電子基準点と島内GPS観測点の相対変位の比較
上:電子基準点「枕崎」に対する「鹿児島三島」の相対水平変位,下:「鹿児島三島」(GSI)に対する東温泉(HGSO)の相対水平変位,N-Sは南北成分,E-Wは東西成分.
「枕崎」に対する「鹿児島三島(GSI)」は全期間を通して1cmの幅の中に納まっており,顕著な変化はありませんが,変化の仕方はランダムではなく,?マークを付記した時期に傾向が変化しているようにみえます.特に東西成分の揺らぎが顕著である点は注目されます.すなわち,「鹿児島三島」は,「枕崎」に対して2002年から2005年頃にかけて東に1cm弱変位し,2006年夏から2007年初頭にかけて西に数mm変位しました.島内で観測したGSI-HGSO基線(ほぼ東西方向,基線長約2km)の変位を同じ時間軸で対比してみると(下のグラフ),同様の傾向が認められます.このことは,2002年から2005年頃にかけて島全体が東に引き伸ばされるように変形し,2006年夏からはその傾向が反転したことを示唆します.
硫黄島の周辺の電子基準点にはこのような変化が認めれないことと,島を変形させていることから,変形をもたらした原因は,硫黄島付近にある可能性が高いと考えられます.最も単純なアイデアは,島の東側に膨張収縮源を想定し,2002年から2005年頃までは収縮,2006年夏からは膨張に転じた,というものです.