全岩化学組成の特徴
安達太良火山の岩石の組成範囲は全岩SiO2量で53〜64 wt.%です(図1,2,3).これらは組成トレンドの違いから,ソレアイト系列とカルクアルカリ系列の2つの大きなグループに分けることができます(図1).この2つの系列の化学組成の差は,K2O 含有量(図2),Sr同位体比(図3),希土類元素組成(図4)などではっきりと見られます.両系列マグマは噴出時期にも差が見られることがわかっており,カルクアルカリ系列マグマは全ての活動期で噴出していますが,ソレアイト系列マグマは第2期のみで噴出しています.この2つの系列マグマの差は,それぞれの本源マグマや分化過程の違いに起因していると考えられています(Fujinawa, 1988, 1990, 1992; 藤縄,1991).
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図1 FeO*/MgO-SiO2組成変化図(藤縄ほか,1984)
安達太良火山の岩石はソレアイト系列とカルクアルカリ系列の岩石から成る.
安達太良火山の岩石はソレアイト系列とカルクアルカリ系列の岩石から成る.
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図2 SiO2-K2O組成変化図(藤縄ほか,1984)
安達太良火山のソレアイト系列岩とカルクアルカリ系列岩は,同じSiO2量で比較したときにK2O量が異なり,それぞれが固有の組成トレンドを形成する.
安達太良火山のソレアイト系列岩とカルクアルカリ系列岩は,同じSiO2量で比較したときにK2O量が異なり,それぞれが固有の組成トレンドを形成する.
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図3 SiO2-Sr同位体比変化図(Fujinawa, 1988)
安達太良火山のソレアイト系列岩とカルクアルカリ系列岩は,Sr同位体比のレベルが異なる.
安達太良火山のソレアイト系列岩とカルクアルカリ系列岩は,Sr同位体比のレベルが異なる.
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図4 希土類元素のコンドライト規格化パターン
左がソレアイト系列,右がカルクアルカリ系列(Fujinawa, 1992).両系列岩でパターンが異なっている.
左がソレアイト系列,右がカルクアルカリ系列(Fujinawa, 1992).両系列岩でパターンが異なっている.