安達太良火山 Adatara Volcano


安達太良火山のあらまし

有史次代の噴火記録
   1900年噴火
   西麓のラハール堆積物

安達太良火山の生い立ち

安達太良火山のテフラ

安達太良火山の岩石・鉱物
   記載岩石学的特徴
   全岩化学組成の特徴

引用文献

著者:藤縄明彦(茨城大学)
作成:2005/7
最終更新:2009/1/23


このデータ集を引用する場合,次のように
引用してください.
藤縄明彦・工藤 崇・星住英夫(2006)
詳細火山データ集:安達太良火山.日本の
火山,産総研地質調査総合センター
(https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/adatara/
index.html).

安達太良火山の生い立ち

 安達太良火山の形成史は,噴火の位置,規模と噴火年代,休止期の存在から3期に分けられます.

 第1期の先駆的活動では,カルクアルカリマグマの噴出により,北端の溶岩ドーム(約55万年前)や,南東部の前ヶ岳東部〜南麓の山体(約44万年前)が形成されました.

 第2期は,35万年前頃,前ヶ岳頂部から和尚山にかけての山体が,数万年以内の期間で形成された時期です.これは,阪口(1995)による和尚山噴出物の噴出時期に,おおむね対応します.この時期は,ソレアイトマグマによる溶岩流中心の活動でしたが,カルクアルカリマグマの噴出も認められました.この後,約10万年間の静穏期をはさんで,約25万年前から第3期となります.

 第3期は,安達太良火山を特徴づける火山列が形成された時期で,テフラから推定される活動休止期(山元・阪口,2000)の存在と,噴火様式,規模の違い,更にはマグマの特性の相違から, 2サブステージに細分できます.約20万年前頃の活動である第3期前半には,溶岩流出とサブプリニー式噴火を主体として,東部では僧悟台・薬師岳および勢至平の台地を形成し,北部で箕輪山を形成し,火山列の土台ができました.この時期における千年あたりマグマ噴出率は,0.1 km3と見積もられます.一方,12万年前より新しい時期には,約3万年前まで,1〜2万年間隔で小規模なマグマ噴出-山体形成活動が繰り返され,鉄山〜胎内岩や,船明神山など,沼ノ平火口周縁に分布する,山頂部分が完成しました.この時期の千年あたりマグマ噴出率は0.01 km3にも達しません.約 2万年を隔てた1万年前からは,マグマ水蒸気ないし水蒸気爆発の繰り返しとなり,最新のマグマ噴出活動は 約2400年前でした(山元・阪口,2000).また,12万年よりの新しい時期には,爆発的な噴火が繰り返し起こり,主として東麓側に降下テフラ(火砕物)層を堆積させました.

 本HPでは,火山地形分類と岩相・岩質をもとに区分した第3期の噴出物について(推定噴出口の孤立した和尚山溶岩流を除いて),構成山体の同一性,推定噴出中心の近接性と層位上の近縁性から, 7ユニットにまとめています.

 東中腹部第1ユニットは,東中腹に広がる台地状地形を構成します.箕輪山と東中腹部第2ユニットは,各々,箕輪山体,篭山周辺部の独自の火山体を構成しています.沼の平火口から西麓に分布する噴出物群に関しては,元山火砕流(12万年前に噴出)との被覆関係と,噴火様式,規模の相違から,沼尻ユニットと沼の平南縁部ユニットに2分しました.沼尻ユニットは西麓に広がる分厚い溶岩流からなり,沼尻南縁部ユニットは,個々の噴出物の体積が小さく,分布域も狭いという特徴があります.山頂部および沼の平北縁部の両ユニットは,各々特徴的に降下堆積物が主体をなしています.

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