姶良カルデラ入戸火砕流堆積物分布図 解説目次
1:はじめに
2:姶良カルデラと姶良入戸噴火の概要
3:入戸火砕流堆積物
4:入戸火砕流堆積物及び姶良Tn火山灰の復元分布と噴出量推定
5:謝辞・協力・出典 / 引用文献
6:Abstract
付図
前を読む 次を読む
1:はじめに
九州南部にある姶良カルデラから約 3 万年前に発生した姶良入戸噴火は, 後期更新世以降にわが国で発生した最大規模の噴火の一つである. この噴火により噴出した入戸火砕流堆積物は鹿児島県を中心とする南九州に広く分布し, いわゆるシラス台地を形成している. また, 入戸火砕流に伴う co-ignimbrite ash である姶良Tn火山灰(AT)は日本列島及び周辺の広範囲を覆っている. 本報告では, 最新の地質調査と既存文献に基づき, 入戸火砕流堆積物の現存分布範囲, 堆積原面高度, 層厚, 最大軽石粒径・岩片粒径, 軽石長軸配列方向の分布をとりまとめるとともに, 復元した火砕流堆積物の分布及び推定される噴出量を示す. また, 姶良入戸噴火一連の噴出物である大隅(おおすみ)降下軽石や垂水(たるみず)火砕流堆積物, 妻屋(つまや)火砕流堆積物及び姶良Tn 火山灰の情報を示した. 現存分布から入戸火砕流の到達範囲と噴出量を復元した結果, 入戸火砕流は姶良カルデラから約100 kmの範囲に到達し, その噴出量は姶良Tn 火山灰と合わせて 800 ~ 900 km3( マグマ換算で 320 ~ 360 km3) と推測される.
入戸火砕流を噴出した一連の噴火に対しては, Aira Eruption (Nagaoka, 1988), 姶良火砕噴火(津久井・荒牧, 1990; 長岡ほか, 2001), AT eruption(Geshi et al., 2020) など複数の名称が使われている. また, 噴火年代が入った名称 (例えば the 29 ka Aira caldera eruption: Brown et al., 2020) などもしばしば使われている. ここでは, 大隅降下軽石の噴出に始まり入戸火砕流の噴出に至った一連の噴火を, 噴出物のなかで最大の体積を占める入戸火砕流堆積物の名称を用いて, 姶良入戸噴火と呼称する.
前を読む 次を読む