火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


火山岩の主要元素組成

薩摩硫黄島火山の火山岩の主要な10元素の濃度を図に示します.図中の×は先カルデラ期,♢がカルデラ形成期,□が稲村岳,△が硫黄岳,○が昭和硫黄島です.

カルデラ形成期の竹島火砕流,後カルデラ期の硫黄岳,昭和硫黄島は,極めて近い化学組成を示し,1つの流紋岩マグマだまりを起源としていることを示唆しています.一方,後カルデラ期の稲村岳は玄武岩マグマによって形成されています.即ち,後カルデラ期には玄武岩と流紋岩が噴出しており,後カルデラ期には少なくとも2つのマグマだまりが存在した可能性があります.

また,図には,昭和硫黄島流紋岩および硫黄岳流紋岩に含まれるマフィックインクルージョン(mafic inclusion)の化学組成がプロットされている.●が昭和硫黄島流紋岩中のマフィックインクルージョン,▲が硫黄岳流紋岩中のマフィックインクルージョンです.

昭和硫黄島流紋岩中のマフィックインクルージョンは,安山岩組成(SiO2=56-61wt%)で,硫黄島に噴出した玄武岩と流紋岩で示される組成の範囲内で幅広く分布し,玄武岩と流紋岩の混合によって形成されたことを示唆しています.例えば,2つのマフィックインクルージョン(1b,4)は未分化稲村岳マグマ(NE)と昭和硫黄島マグマ(S-2)の混合線上の組成を持ち,3つ(1a, 2, 3)は,未分化稲村岳マグマ(NE), 昭和硫黄島マグマ(S-2),稲村岳スコリア石基組成(Ngm)の3つで囲まれた領域に位置 しています.

一方,硫黄岳流紋岩中のマフィックインクルージョンは玄武岩質安山岩組成(SiO2=54-55wt%)で,稲村岳マグマに近い組成を持っています.稲村岳スコリア組成とその石基組成(Ngm)の線上に位置しているので,稲村岳マグマが少し結晶分化して形成されたと考えられます.

Saito et al. (2002)のFig.3を改変.

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