火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


長瀬火砕流

長瀬火砕流(小野ほか,1982)は,粗粒の軽石を含む火砕流堆積物で,竹島に分布し,硫黄島での分布は確認されていません.竹島では小アビ山火砕流を覆い,籠港降下テフラ以降の堆積物に覆われます.

写真は,竹島の籠港の東側の絶壁上部で,下半分は先カルデラ火山の赤崎溶岩(流紋岩),その上に,長瀬火砕流堆積物(写真中央やや右の白色の堆積物),籠港降下テフラ,鬼界-アカホヤ噴火による船倉降下軽石,船倉火砕流堆積物,竹島火砕流堆積物が覆っています.

長瀬火砕流堆積物は非溶結で,灰白色のよく発泡した軽石を含み,大型のものは径60cmを越えます.また石英斑晶を含み.基質は軽石と同質の火山灰からなり大量の火山豆石をみます.長瀬火砕流のcoignimbrite ashと考えられている鬼界葛原テフラ(町田・新井,1983)は九州から関東地方に至る広い範囲に分布する広域火山灰で,石英斑晶の熱ルミネッセンス年代,ジルコンのフィッショントラック年代および他のテフラとの層位関係から約9.5万年前に噴出したと考えられています(町田・新井,2003).

2006年10月29日 斎藤元治撮影

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