火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
シミュレーションの結果(その1)
周囲の地層の透水係数を1x10-13 m2(一部のみ1x10-12 m2),火道の透水係数を6×10-11 m2,とした場合の計算結果を示します.ここでは,ソースとして雨水のみ(Rain),マグマの熱を加えたもの(Rain+magma),さらに脱ガスを加えたもの(Rain+magma+gas,マグマが脱ガスする深度は125m)を示します.脱ガスによる水蒸気の放出量は400kg/sとしてあります.
温度を色で,流体(脱ガスを加えた場合は液相の水+水蒸気,その他は液相の水)の流量(単位はkg/m2s)と流動方向をベクトルで表しています.脱ガスを加えた場合,水蒸気と液相の水の流動は,図ではまとめて示しているのでわかりませんが,水蒸気は水平方向から上向きに,液相の水はほとんど下向きに流れています.液相の流量のほうが大きいためトータルとして図に示されるようなベクトルになっています.ベクトルの単位あたりの大きさが異なることに注意してください.火道から周囲へ流出した水蒸気は冷却し,山体内は二相状態になっています.このうち液相が下方へ流動していることを示しています.火山ガスのうち液相として下方へ流動したものは山腹の噴気活動や海岸線での温泉活動に寄与していると考えられます.