火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
シミュレーションの境界条件等
計算は円筒座標2次元で行っています.地形を近似して地表を与えました.
境界条件は,上側,右側で透水性境界,下側は不透水境界とします.
ソースとして,最上部のグリッドに降雨に対応した水の流入(鹿児島県の1951-1980年の年降水量平均値2375mmの10%)を,最下部のグリッドに九州南部で測定されている平均的な地殻熱流量に対応した熱を流入させます(8.38×10-2W/m2).さらに,最上部のグリッドには,放熱量に対応した熱のソースを加えました.これは,地表面温度に対応して熱が流出するというもので,Sekioka and Yuhara (1974)の定式化に基づいたものです.これによって,計算結果と観測値の直接的な比較が可能になります.
計算領域は,マグマ,火道,周囲の地層からなり,マグマは一定温度で不透水とし(計算上は1x10-21 m2とした),マグマの直上のグリッドに脱ガスに相当する量をガスのソースとして与えました(Degassing 400kg/s).このガスの流入によって火道の間隙圧は上昇します.計算では火道と周囲の地層の透水係数をそれぞれ与えますが,火道については圧力が異常に上昇しないように透水係数をある程度大きくする必要があり,ここでは3×10-12 m2以上としました.周囲の地層については,後で述べますように透水係数を1x10-13 m2としています.ただし,山頂の表層部のみ1x10-12 m2(図の灰色の部分)としています.
計算に当たって,地下水面を海水準に与えました.すなわち,地下水面より上部では,空隙が水と空気で満たされた不飽和層(Unsaturated porous media with air),下部を水で満たされた飽和層(Saturated porous media with sea water)と見なしています(図の青色の部分).