火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
未変質岩で規格化したREEパターン変化
横軸に希土類元素を原子番号順に配置してあります.縦軸は各試料 (6個) のREE濃度を未変質岩のREE濃度で割った値を示します.右側の数字は,SiO2=71-72wt%の未変質流紋岩が各種元素の溶脱によりSiO2含有量が増加していることを示しています.
REEについては,Euのみが急激に溶脱しており,Euを比較的多く濃集していた流紋岩の斜長石斑晶が溶脱されたことによると考えられます.
Eu以外は,SiO2=80wt%台ではLREEとHREEではあまり差はありませんが,SiO2>90wt%になると大局的にLREEの方がHREEよりも溶脱が進んでいることがわかります.これは,Wood (1990), Lewis et al. (1998)などの実験結果から推定すると,硫黄岳の火山ガスはフッ素イオンよりも硫酸イオンに富んでおりそれらが凝縮してpH<2の強酸性熱水を生じたため,硫酸イオンと錯体を形成しやすいLREEが優先的に溶脱されたためと考えられます.
Hamasaki (2002)のFig.7bを改変.