火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


輝石地質温度計によるマグマ温度

輝石地質温度計とは,平衡共存する2種の輝石の化学組成から輝石の生成温度を推定する方法(Lindsley, 1983)で,岩石学でよく用いられています.

この図は,薩摩硫黄島火山岩の単斜および斜方輝石の化学組成から輝石地質温度計で見積もられたマグマ温度を示します.計算にはAnderson et al. (1993) によって作成されたQUILFプログラムを用いています.横軸は,カルデラ形成期および後カルデラ期の各噴火を示しています.左側に,後カルデラ期の各噴火の輝石の化学組成を示しています.

流紋岩マグマの温度は,14万年前の小アビ山火砕流噴火マグマ(PA)が約990℃,7300年前の竹島火砕流マグマ(PT)が960±21℃,後カルデラ期の硫黄岳マグマ(I)が960±28℃,1934-1935年の昭和硫黄島マグマ(SI)が967±29℃です.従って,流紋岩マグマはカルデラ形成期以降,960-970℃という高温を維持していると言えます. 一方,稲村岳玄武岩マグマ(N)の温度は,流紋岩マグマより高く,1125±27℃という値が得られています.

硫黄岳火口の噴気孔の最高温度は約900℃です.最新のマグマ噴火である昭和硫黄島噴火のマグマが967±29℃ですので,もし,火山ガスがこの昭和硫黄島噴火マグマを起源とするとしたら,火山ガスは冷却をあまりせずに地表に達していることになります.

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