火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


後カルデラ期火山岩の輝石の化学組成

後カルデラ期火山岩(稲村岳,硫黄岳,昭和硫黄島,およびマフィックインクルージョン)には,どれも単斜輝石(Cpx)と斜方輝石(Opx)が存在します,単斜輝石,斜方輝石は,主として,SiO2, CaO, MgO, FeOで構成された鉱物で,輝石のCa, Mg, Feのモル比は,晶出する時点のマグマの化学組成に依存します.そのため,斜長石のAn#と同様に,輝石のCa, Mg, Feのモル比を測定することで,輝石が晶出したマグマの情報を引き出すことができます. 輝石のCa, Mg, Feのモル比は,通常,図のような頂点がWo, En, Fsである三角ダイヤグラムで表されます.Wo,En,Fsはそれぞれ輝石の単成分である珪灰石(Wollastonite,CaSiO3),エンスタタイト(Enstatite,MgSiO3),フェロシライト(Ferrosilite,FeSiO3)を示します.

この図は,後カルデラ期火山の輝石の化学組成(En-Fs-Wo)を示しています.(a), (b), (c)は三角ダイヤグラムの左下を拡大したものです.Diは透輝石(Diopside,CaMgSi2O6)です.

硫黄岳と昭和硫黄島の流紋岩の輝石はほぼ同じEn-Fs-Wo量比を示す一方,稲村岳は硫黄岳・昭和硫黄島よりわずかにEn成分が多い(Mg-rich)ことがわかります. 一方,マフィックインクルージョンの輝石は,稲村岳,硫黄岳,昭和硫黄島の組成範囲に分布しています.

Saito et al. (2002)のFig.7を改変.

この画像へのリンク: