火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


火山岩の斜長石の化学組成

後カルデラ期火山岩の斜長石斑晶のコア,および石基の斜長石コアの化学組成を示しています.横軸のAn#は斜長石のCaと(Ca+Na)のモル比を表し,縦軸は頻度を表します.左は,各流紋岩とそれに含まれるマフィックインクルージョンの斜長石斑晶について,右は,マフィックインクルージョンの石基斜長石について示しています.リム組成についても矢印で示しています.

稲村岳はAn#72-96,硫黄岳・昭和硫黄島はAn#44-70の組成を持っています.即ち,玄武岩では高いAn#のコアを持つ斜長石が晶出し,流紋岩では玄武岩よりも低いAn#のコアを持つ斜長石が晶出しています.

一方,昭和硫黄島のマフィックインクルージョンはAn#42-96で,玄武岩から流紋岩に相当する幅広い組成を持っています.硫黄岳のマフィックインクルージョンの大半はAn#~90で高いAn#を示し,1つのみAn#52と流紋岩と同様のAn#を示しています.

マフィックインクルージョンの斜長石斑晶のコアが幅広い組成を持つことは,玄武岩,流紋岩起源の斑晶があることを示し,両マグマの混合によってマフィックインクルージョンが形成されたことを示唆します. また,昭和硫黄島のマフィックインクルージョンの方が硫黄岳のマフィックインクルージョンより,流紋岩起源の斜長石が多いことは,「昭和硫黄島のマフィックインクルージョンの方が硫黄岳のマフィックインクルージョンより流紋岩マグマの混合の割合が大きい」ことを示唆し,全岩化学組成の結果に一致します.

一方,マフィックインクルージョンの石基斜長石のコア組成はAn#60-80に集中し,均質な組成を示しています.このことは,マフィックインクルージョンを形成したマグマのメルトは玄武岩と流紋岩の間の中間的な組成だったこと,両マグマが混合した結果形成された均質なメルトから石基が晶出したことを示唆しています.

Saito et al. (2002) のFig.5を改変.

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