火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
小アビ山火砕流
小アビ山火砕流(小野ほか,1982)は,竹島および硫黄島の先カルデラ火山を覆って分布します.最下部に降下軽石を伴い,火砕流本体は斜交層理をともなう多数のフローユニットの累積からなり,特に下部が強く溶結した火砕流堆積物です.基盤の凹凸を埋めて堆積し,層厚変化が激しいですが,竹島では厚く(20〜100m),硫黄島では薄い(数〜50m)傾向があります.
硫黄島では,平家城の海水面付近に分布するほか,矢筈岳火山,長浜溶岩を覆い分布します.長浜溶岩上の平坦部では全体で厚さ10m以下ですが,坂本,小坂本,大浦などの谷地形を埋めたところでは,厚く(30〜50m程度),溶結度も高くなります.平家城では籠港降下テフラに覆われるほか,坂本,小坂本などでは浸食面を幸屋(船倉)降下軽石や竹島火砕流に直接覆われます.
写真は,硫黄島の北部の海岸で,小アビ山火砕流(K-Kob)が矢筈岳火山(Yhz)を覆い,籠港降下テフラ(K-Ko)に覆われているのがわかります.
1999年11月19日 川辺禎久撮影