火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


地下水観測井地質柱状図および位置図

工業技術院により深さ100〜150mの地下水観測井が島内で9本掘削され,採取されたコアの岩相および変質状況などが報告されています(吉田,1976;金原ほか,1977).コアの岩石はいずれもかなり変質していますが,おおまかに構成岩石の区分がなされており,地下100m付近までの地下構造が推定できます.

稲村岳と硫黄岳の中間の掘削井(No.1)では稲村岳溶岩の下位に流紋岩溶岩(硫黄岳lava)および同質火砕岩(硫黄岳tuff bre.)が海面下約70m付近まで存在し,同様の岩石が矢筈岳近傍を除き広く分布しています.

矢筈岳近傍の2つの掘削井(No.4およびNo.6)では,矢筈岳を構成する苦鉄質溶岩および同質火砕岩(矢筈岳lava/tuff bre.)が掘削井底まで分布します.

硫黄岳溶岩と同質火砕岩で変質の度合いを比べると,溶岩は変質の程度が弱くおおむね新鮮であるのに対し,火砕岩は明らかに変質が進んでおり,特に基質部分は変質が著しいです.変質鉱物としては,トリディマイト,クリストバライトなどのシリカ鉱物,明礬石などの硫酸塩鉱物,モンモリロナイトなどの粘土鉱物が生成しています.

吉田(1976)では,各掘削井のコアの変質状況を,以下の3つに大別しています.

I.強酸性熱水により生成される明礬石が多量に出現するもの.掘削井(No.1,7,8,9)の火砕岩層に明礬石が多く出現しています.掘削井(No.2, 3)もやや変質の程度が低いですが,これに入ります.これらのコアの明礬石は,現在の地下水位下で生成しています.

II,酸性熱水では生成されないモンモリロナイトによって特徴づけられるもの.中性に近い低温の熱水による生成です.掘削井(No.4, 5)が該当します.

III. IとIIの特徴を合わせ持つもの.掘削井(No.6)が該当します.

母岩の亀裂や空隙を埋めて変質鉱物が生成されていることや,酸性熱水の影響により生成される変質鉱物の大部分が地下水位下で出現していることから,熱水の通路となり易いところが変質作用の中心となっていると考えられます.

吉田(1976)の図6.4.2-3に加筆改変.

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