火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


MELTSによる計算結果

「MELTS」とは,Ghiorso and Sack (1995)らにより開発された,熱力学的モデルに基づいてマグマの相平衡や晶出鉱物組成などを数値計算で求めることができるプログラムです. ただし,このプログラムに用いる熱力学パラメータは実験岩石学的データのコンパイルに基づいており,対象とするマグマによって実験岩石学的データの質・量にばらつきがあるため,条件によって計算精度にもばらつきが出ます.従って,厳密な議論をしたければ,実際に高圧実験をした方が良いのですが,火山岩の岩石データからマグマの相平衡をおおまかに議論をする上で目安にはなるので,よく用いられています.

薩摩硫黄島火山の竹島火砕流噴火の流紋岩について,同プログラムによる相平衡計算結果を図に示します.横軸はマグマの圧力,縦軸は温度(℃)です. マグマの化学組成は竹島火砕流軽石の全岩組成,マグマは水に飽和,酸素フガシティはNNOの酸素フガシティと同じ,を仮定しています.

水に飽和した系では一般に高圧(高H2O)ほど鉱物の晶出開始温度は低下します.同じ鉱物組合せの場合,低圧(低H2O)ほど高温条件になります.図のように,MELTSプログラムによる計算では,竹島火砕流のマグマ温度が900-950℃であれば,圧力はおよそ75MPa以下になります.

(計算と解説は,東宮昭彦)

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