火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
小アビ山火砕流堆積物
硫黄島の大浦の対岸の長浜溶岩の谷を埋めて厚く堆積する小アビ山火砕流堆積物.谷中央ほど厚くレンズ状に溶結しているのがわかります.下位がより強く溶結し,上位ほど細かい層理が発達,溶結度が下がっています.最上部を不整合に竹島火砕流堆積物が覆うように見えています.
長浜溶岩流上の小アビ山火砕流堆積物は最下部に細粒(<2cm)の灰白色降下軽石層(厚さ40〜80cm)を伴い,それを火砕流堆積物が覆います.火砕流堆積物の下部は溶結度が高く,硫黄島では溶結部の厚さは薄いところでは数m程度ですが,大浦や小坂本などの凹所を埋めたところでは20m以上に達します.火砕流堆積物上位では,それぞれが薄い(1〜数m)非溶結部と溶結部が互層するようになり,また異質,類質の円礫を含むようになります.強溶結部では赤色〜暗褐色の基質中に黒曜岩の本質レンズを含みます.非溶結部の軽石は暗褐色で,粒径は数cmから30cm程度まで変化し,発泡度はあまり高くありません.
2006年10月 川辺禎久撮影