火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


平家城露頭での籠港降下テフラ柱状図

平家城の道路脇露頭の籠港降下テフラは,主に不明瞭な層理をもつ暗灰色で主に発泡の悪い安山岩岩片からなる粗粒降下火山灰層で,径5mm程度の黄白色〜黄色軽石からなる降下軽石層および細粒の白色火山灰層を何枚か挟みます.降下軽石層のうち,上から1/3ほどの位置の降下軽石が桜島起源の薩摩火山灰(約13ka)に対比されています(小林ほか,2006).主体をなす粗粒降下火山灰層は,発泡のよくない玄武岩〜安山岩質の細礫〜砂サイズの岩片からなり,不明瞭な層理を持つことがあります.特に下部は厚さ10から30cmほどの粗粒火山灰層と茶色腐食土壌の互層が発達しています.上部はやや厚い火山灰層が目立ち,白色火山灰単層,降下軽石層などもやや多い.

小林ほか(2006)は平家城の籠港降下テフラから上中下の3層準の腐食土壌で放射性炭素年代測定を行い,下位から11730±140,11500±120,9820±120年前の年代値を得ています.このことから硫黄島近傍で少なくとも鬼界-アカホヤ噴火(7300年前)の前約6000年間大きな休止期なく玄武岩-安山岩質の噴火活動が継続していたと考えられます.発泡のよくない岩片が多く,不明瞭な層理も認められることも多いことから,ブルカノ式もしくはいわゆる灰噴火(小野,1995)のような噴火様式だったと考えられます.

平家城道路脇露頭の南側,カルデラ壁に近い側では,カルデラ壁と平行な走向の小断層群が認められます.多くは正断層成分を持ち,鬼界-アカホヤ噴火噴出物まで変位させているが,後カルデラ期のテフラまで達していないことから,鬼界-アカホヤ噴火時のカルデラ形成に伴う断層群と考えられます.

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