火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


籠港降下テフラ

籠港降下テフラ(K-Ko)は,長瀬火砕流を覆い鬼界-アカホヤ噴火噴出物に覆われる薄い降下軽石・スコリアを挟む降下火山灰累層で,竹島で記載されました(小野ほか,1982;奥野ほか,1994).

硫黄島では平家城の道路脇に籠港降下テフラの良い露頭があるほか,写真のように,平家城東側および北側の海食崖に小アビ山火砕流(K-Kob)を覆う籠港降下テフラが露出します.下位の全体に褐色を帯びた降下テフラ層を上位の暗灰色降下テフラ層が不整合で覆う様子が観察できます.ここでは全体の厚さは約40mに達し,竹島の籠港降下テフラよりも厚い.平家城の道路脇露頭では,このうち上部の厚さ約17mの籠港降下テフラを観察することができます.

また,平家城の海食崖では,竹島火砕流堆積物の下に,籠港降下テフラの浸食面を覆う厚さ約20mの厚い粗粒白色軽石層が遠望できます.堆積物上面が平らなことから,小野ほか(1982)では竹島火砕流と見なしてますが,遠望する限り淘汰はいくぶん悪いものの粗粒(最大径30cm前後)の軽石からなり基質がほとんど認められないこと,不明瞭ながら2次的に転動したらしい層理面が遠望できることから,ここでは幸屋(船倉)降下軽石(K-KyP)としておきます.同様の粗粒白色軽石は大谷浜西の海食崖上にも認められます.

幸屋(船倉)降下軽石の上部には,類質岩片が多い竹島火砕流堆積物(K-Ky)が5m程度の厚さで露出しています.ここでは火砕流の下部に厚さ1m前後の溶結部(W)があります.坂本へ下る道沿いの竹島火砕流も類質異質岩片の量が著しく増大しており,火口近傍のlag breccia相と考えられます.竹島火砕流に含まれる岩片の量は竹島より硫黄島のほうが一般的に多く,その平均粒径も大きいことから,竹島火砕流の噴出源はより硫黄島に近いところにあったと考えられます.

1999年11月19日 川辺禎久撮影

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