火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


熱伝達の概念モデル

硫黄岳では,マグマが地下浅いところまで上昇しています(赤色の部分).図は海水準(海を青色で示す)にマグマの頭部が位置すると想定しています.マグマの周囲で熱水対流が生じるとともに,マグマの頭部では活発な脱ガスが起こります. 山頂火口やその外側の山腹には,高温や低温の噴気孔とその周囲の地中温度異常域(噴気地)が広がっていますが,このような活動はマグマから上昇してくる高温の火山ガスによって引き起こされています.火山ガスは火道のような弱線を集中的に上昇し,多くがそのまま山頂部の噴気孔から放出されますが,上昇過程で一部が周囲へもれ,冷却し凝縮します.山麓の噴気孔や海岸の温泉は天水の他にそのような凝縮した成分を起源にしていると考えられます.高温の火山ガスが地中において沸点程度まで冷却することによって,大地が温められます(黄色の部分).それによって噴気地が形成され,熱が大気へと放出されていると考えられます.