火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


火山ガスの採取分析方法

噴気孔にチタン製または石英ガラス製のパイプを差し込み,火山ガスを噴気孔からパイプとそれについないだシリコンゴム製チューブを経て,採取容器に導入します.採取時には,採取容器は冷却水で冷やします.

図中の上に示した採取容器は,火山ガスの採取に広く用いられているものです.テフロン製の真空コックがついたガラス瓶で,あらかじめ水酸化ナトリウム水溶液が入れてあり,空気はあらかじめ排気してあります.火山ガス研究者のGiggenbach博士が発案したので,通称”Giggenbach bottle"と呼ばれています.

Giggenbach bottleに導入された火山ガス成分のうち,H2Oは冷却により凝縮し液体となり,酸性ガスであるCO2, SO2, H2S, HCl, HFは水酸化ナトリウム水溶液に吸収され,残りの希ガスやN2等不活性ガスは容器内の気相に分配されます.持ち帰ったGiggenbach bottle内の試料を,ガスクロマトグラフ,液体クロマトグラフ,分光光度計等の機器分析や湿式分析を行い,H2O以外の濃度を決定します.このH2O以外の成分の総量と試料の質量の差から,H2Oの濃度を決定します.

Giggenbach bottleを用いた方法の他に,アルカリ性水溶液を入れた二口注射器を用いた方法も使われています.

下の採取容器は,火山ガスのH2Oの水素・酸素同位体比や微量元素濃度の測定に用いる凝縮水の採取に用います.採取容器(空)の右端の空いた管に,ポンプを接続し,火山ガスを吸引します.火山ガスのH2Oは容器で凝縮し液体としてたまります.火山ガス中の微量元素もこの凝縮水中に保存されます.この液体試料をポリ瓶等に保管し,実験室に持ち帰り,質量分析計等の機器分析を行います.

この画像へのリンク: