火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)

鉄・チタン鉱物温度計によるマグマの温度と酸素フガシティ

鉄・チタン鉱物温度計とは,輝石地質温度計と同様に,共存する2種の鉄・チタン鉱物の化学組成から鉄・チタン鉱物の生成温度とマグマの酸素フガシティを推定する方法です(Buddington and Lindsley, 1964).フガシティとは,実在気体の性質を表す熱力学的量で,理想気体の圧力に相当します.

この図は,鉄・チタン鉱物温度計を用いて得られた薩摩硫黄島の流紋岩マグマの温度と酸素フガシティをプロットしたものです(Saito et al., 2002).Anderson et al. (1993)によって作成されたQUILFプログラムを用いて計算しています.他の火山についてのデータはHildreth (1981) のFig.3を引用しました.FMQおよびNNOで示した破線は,それぞれ鉄カンラン石(Fayalite,Fe2SiO4)- 磁鉄鉱(Magnetite,Fe3O4)-石英(Quartz,SiO2),ニッケルとニッケル酸化物(Ni-NiO)が共存している時の酸素フガシティと温度の関係を示しています.FMQとNNOは,天然の高温岩体やマグマの酸素フガシティを表すときによく用いられる指標です.縦軸の酸素フガシティは対数表示で,上に行くほど酸素フガシティが高くなります.

流紋岩マグマの温度を硫黄岳軽石を用いて見積もった結果(赤い三角)は971 ±31°C (n=6)になり,輝石地質温度計による見積もり(960 ±28°C)とほぼ一致しています.

一方,硫黄岳火山弾は884 ±13°C (n=3)で硫黄岳軽石よりも低い温度を示します(橙色の三角).昭和硫黄島溶岩は880±24°C (n=12)で(黄色い丸),これも輝石地質温度計による結果(967±29°C)より低くなっています.鉄・チタン鉱物は反応が速く,マグマ噴出後の冷却時に再平衡が起きたため,輝石地質温度計より低い温度を示している,と考えられています.

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