火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


定常的に発生している高周波の極微小地震

Sherburn and Nishi(unpublished data)によって1993年10月に観測された高周波の極微小地震の波形とスペクトル例:山頂火口脇(IWDK点近傍)に設置した1Hz速度型地震計による上下動速度振幅波形 及び その地震動のspectrogram(カラーの部分).

上の記録は1993年10月30日 2:39:42 からの,下の記録は1993年10月29日21:21:40 からの観測記録で,横軸は経過時間(秒)を示します.Spectrogramはパワー・スペクトルの時間変化を示した図であり,横軸に時間,縦軸に周波数(Hz),色によってその時間を中心としたある時間間隔(ここでは1秒間)のパワー・スペクトルの値を示します.左の凡例に示したように青→緑→黄→赤→紫と暖色系になるほど大きなエネルギーを示します.上の地震では,時間軸の2秒付近に,40~50Hzという高周波の卓越周波数を持つ単発の極微小地震が記録されています.下の例では,4秒付近に約30Hzのピークを持つ振動が記録されていますが,その後に約22Hzの振動が6秒間ほど励起されており,このような活動がしばらく続く微動的な波形の例です.

1993年10月に実施された初の山頂部での観測においては,このような高周波の極微小地震がほぼ定常的に発生していました(Sherburn and Nishi, unpublished data).ここに示した孤立イベント,微動的なイベントなどの他にも様々な波形がありますが,30Hz以上の卓越周波数を持つイベントが多く観測されました.

その後の1998年11月からのID560における長期モニタリング,1999年以降の産総研と京大防災研による共同観測などにおいて,山頂部に設置した地震計には,定常的に発生している高周波の極微小地震が記録されています.2001年11月20日~21日の地震計の連続記録に見えるパルス状の振動もこのような極微小地震です.

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