火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
後カルデラ期テフラ柱状図
平家城,坂本 後カルデラ期テフラ柱状図
K-Sk-lはK-Sk-l-1とK-Sk-l-2に区分されます.K-Sk-l-1とK-Sk-l-2は,いずれも不明瞭な層理がある礫混じりの灰色粗粒火山灰から構成されています.平家城のK-Sk-l-1最下部には径3cmほどの灰白色軽石をかなり含む厚さ20〜50cmの火山灰層があり,それを最大長径80cm程度の流紋岩岩塊がsag構造を作り変形させています.含まれる礫はいずれも新鮮な流紋岩質岩片で,変質はほとんど認められません.
K-InはK-Sk-lと10〜12cmほどの黒色腐食土壌で区分される玄武岩質スコリアを含む稲村岳起源の降下テフラ群で,明瞭な腐食土壌でさらにK-In-1とK-In-2に区分されます. K-In-1の下部はスコリア層と硬い灰色火山灰層の互層からなり,スコリア層は平家城など多くの場所では2枚,分布主軸に近い矢筈岳西では3枚あります.K-In-2はK-In-1と厚さ15cmほどの黒色腐食土壌で区分されます.K-In-2は2枚の降下スコリア層を含み,矢筈岳西では下位のスコリア層が厚さ150cm,上位スコリア層が60cmと非常に厚いです.おそらく稲村岳山体をつくった時の降下スコリア層と考えられます.矢筈岳西から永良部崎にかけての長浜溶岩上に分布するK-In-2のスコリア層にはさまれた層準にはbomb sagを伴う発泡の悪いスコリアを含むサージ堆積物が分布し,稲村岳西方,現在の硫黄島集落付近で起きたマグマ水蒸気爆発による堆積物と考えられます.K-In-1直下の腐食土壌から炭素同位体年代法(14C)により3890±40年前の年代値が得られています.
K-Sk-uはK-Inと30cmほどの腐食土壌で境される,灰色火山灰を主体とする降下テフラ群で,さらに腐食土壌でK-Sk-u-1からK-Sk-u-4の4つに区分されます. K-Sk-u-1は明灰色無層理の粗粒火山灰層で,最下部にbomb sag を伴います.bomb sagは坂本から平家城にかけて分布し,礫は最大径約1mに達します.bomb sagの分布,飛来方向から現在の硫黄岳付近で爆発的な噴火が発生したものと考えられます.K-Sk-u-2も粗粒火山灰を主体としますが,平家城など硫黄岳に近い露頭ではより粗い岩片を多く含む層や火山豆石を含む薄赤色火山灰層,径2cmほどの軽石薄層を間にはさみます.K-Sk-u-3も同様に粗粒火山灰層中に火山豆石を含み細かい層理がある硬い火山灰層,薄赤色火山灰層などをはさみます.前野・谷口(2005)はK-Sk-u-3の層準に縞状軽石を含む火砕流堆積物を記載しています.K-Sk-u-4は無層理の明灰色火山灰からなり,径2cm以下の変質岩片が散在しています.K-Sk-u-1直下の腐食土壌から2210±40年前の年代が,K-Sk-u-4直下の腐食土壌から920±40 および940±40年前の年代値が得られています.
Kawanabe and Saito (2002) Fig.4を改変.