火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


流紋岩マグマのAn-T-PH2Oダイヤグラム

この図は,有珠火山の流紋岩マグマの実験岩石学研究で得られているAn-T-PH2Oダイヤグラムです(東宮,1997).

これに約7300年前の竹島火砕流噴火マグマの温度(960±21°C),斜長石のAn#58±4をプロットすると100MPa(=1kb)の等圧線の延長上に位置します(Caldera-formingと記した紫色の範囲).また,昭和硫黄島マグマの温度(967±29°C),斜長石のコアAn#54±3,リム49±4をプロットすると,カルデラ噴火マグマより低圧側の50-100MPa(=0.5-1 kb)近くにプロットされます(橙色の範囲).

メルト包有物分析から得られている竹島火砕流噴火マグマのガス飽和圧力は80-180MPa(=0.8-1.8kb)であり,An-T-PH2Oダイヤグラムでマグマの温度と斜長石のAnから見積もられる圧力100MPa(1kb)と同様です. 一方,メルト包有物分析から得られている昭和硫黄島マグマのガス飽和圧力は20-50MPa(=0.2-0.5kb)で,An-T-PH2Oダイヤグラムで見積もられる圧力より低くなっています.

MELTSプログラムと同様に,An-T-PH2Oダイヤグラムとメルト包有物分析結果を厳密に比較するには,実際のカルデラ噴火や昭和硫黄島噴火の火山岩で相平衡実験を行う必要が有り,今後の課題です.

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