火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
An-T-PH2Oダイヤグラム
マグマから晶出する斜長石の化学組成(An#)は,マグマの温度,圧力(含水量)によって変化します.この関係を示した図をAn-T-PH2Oダイヤグラムと呼びます.
実験岩石学研究で得られている水に飽和している玄武岩〜安山岩マグマの温度,圧力,斜長石の化学組成(An#)の関係(Housh and Luhr, 1991;Rutherford et al., 1985)を図に示します.1kb, 2kb, 4kbを記した実線が,100MPa, 200MPa, 400MPaの各圧力でのマグマの温度と斜長石のAn#の関係です.
薩摩硫黄島火山岩の分析から,稲村岳マグマの温度は1125±27°C, 斜長石のAn#は85±5と見積もられています(図の青色の部分).残念ながら,この温度での実測値がありませんが,1kbの関係を示す線の延長上に稲村岳マグマが位置しているようにみえます.これは,メルト包有物分析で得られているマグマのガス飽和圧力70-130MPa(=0.7-1.3kb)と調和的です.