後期更新世以降の火山灰
(10万年前以降の火山灰)
 外山火山灰の上位には2つの火山灰層(渋民火山灰と外山火山灰)が存在する.外山火山灰上部の「葉の木谷地第2火山灰」が100-120千年前に噴出した洞爺テフラに,また「葉の木谷地第1火山灰」が約8万9千年前の阿蘇4-テフラに対比されている(町田ほか,1984).従って,その上位の渋民火山灰は後期更新世以降の噴火堆積物ということになる.
模式層序



図1.10万年以降の火山灰模式層序
土井(2000a)の総合模式柱状図から一部を抜粋 

渋民[シブタミ]火山灰
定義 中川ほか(1963),磯(1976)再定義.
模式地 玉山村JR渋民駅付近
層序関係 外山火山灰を局所的に不整合で覆い,分火山灰に不整合に覆われる火山灰層.黄土色風化火山灰質土壌(一部クラック帯)をはさみ,スコリア・火山砂・軽石層からなる.
 段丘との関連から,上・中・下部に区分される.すなわち,中部以上は渋民段丘および高松段丘を覆い,上部は好摩段丘および雫石段丘を覆う.

下部の鍵テフラとしては,下位より川口軽石(十和田−オコシ軽石に対比),加賀内第3スコリア,加賀内第2スコリア,加賀内第1スコリアが認知されている.中部の鍵層としては,生出黒色火山灰が認知されているが,これは風化火山灰質土壌に境される複数の火山砂・スコリア・軽石を一括した呼称で,構成ユニットである軽石に対して雪浦軽石という名称がついている.上部の鍵層としては,滝沢第2スコリア,大不動火砕流,好摩沢ガラス質火山灰,滝沢第1スコリアが認定されている.なお,山小沢岩屑なだれ堆積物は,滝沢第2スコリアの下位に対比されている(土井ほか,1995).
渋民火山灰中の鍵テフラ
川口軽石
 
命名:磯(1976).
模式地:岩手町川口付近.
 黄〜淡黄褐色(乾燥すると白黄色)の淘汰の良い軽石層で,1降下ユニットからなる.軽石粒径はおおよそ2-3mmで,風化が進行しており軟弱.1mm大の安山岩質岩片がごま塩状に含まれる.土井(2000a)により十和田−オコシ2軽石に対比されている.
加賀内[カガナイ]第3スコリア
 
命名:大上・土井(1978a).
模式地:滝沢村加賀内付近.
 赤褐色〜黒色の細粒のスコリア層.複数の降下ユニットからなり,上部で火山砂質となる.全体的に固結する.
加賀内第2スコリア
 
命名:大上・土井(1978a).
模式地:滝沢村加賀内付近.
 赤褐色から茶褐色スコリアからなり,砂質火山灰を介在して少なくとも5つの降下ユニット以上よりなる.
加賀内第1スコリア
 
命名:磯(1976).
模式地:滝沢村加賀内付近.
 スコリアと火山砂からなり,少なくとも8つの降下ユニットが確認される.比較的粗粒で緻密な黒色スコリアからなる.インボリューションが顕著に発達する.
生出[オイデ]黒色火山灰
 
命名:中川ほか(1963).
模式地:玉山村生出付近.
 スコリア,火山砂および軽石層からなり,風化火山灰質土壌によって挟在される火山灰群.
詳細解説
雪浦軽石
 
命名:中川ほか(1963).
模式地:岩手郡岩手町雪浦付近.
生出黒色火山灰下部の粗粒な白色軽石層.
詳細解説
滝沢第2スコリア
 
命名:磯(1976).
模式地:滝沢村加賀内付近.
 スコリアおよび火山砂からなる成層した降下スコリア層.インボリューション構造が発達する.
詳細解説
十和田大不動[オフドウ]火砕流堆積物 
 
命名:東北地域第四紀研究グループ(1969)の「大不動浮石凝灰岩」で,宝田・村岡(2004)により給源火山を明確にするため,十和田大不動火砕流堆積物とされた
模式地:本来の模式地は青森県内であるが,岩手火山地質図内では岩手山の東部から北東部で認められ,赤川沿いの河岸段丘堆積物中に挟在される.
 岩手山から約50km離れた,十和田火山から噴出した大規模火砕流堆積物.噴火年代は約3.2万年よりやや古いと考えられている(町田・新井,2003).岩手火山東部では,風化火山灰中に粒径0.5〜1cmの黄白色で発泡度の良好な軽石の散在層として確認されることが多い.
分布図
滝沢第1スコリア
 
命名:磯(1976).
模式地:滝沢村加賀内付近.
 スコリアおよび火山砂からなる成層した降下スコリア層.インボリューション構造が発達する.
詳細解説
姶良[アイラ]Tn火山灰
 
南九州の姶良カルデラの大規模火砕流噴火によってもたらされた火山灰で,分布域はほぼ日本全土を覆うガラス質火山灰.(町田・新井,1976).滝沢第1スコリアの層準に挟在される(古澤,2004).

分[ワカレ]火山灰
定義 中川ほか (1963),磯(1976)再定義
模式地 滝沢村分付近.

原地形に沿って堆積する火山灰グループで,下位の渋民火山灰(グループ)を不整合で覆う.
層序関係 下半部は黄土色風化 火山灰質土壌を介して砂質火山灰および軽石層からなる.上半部は有機質土壌を介してスコリアおよび砂質火山灰から成り,一本木火山礫部層と呼ばれることもある.
 下半部の鍵テフラとしての軽石層はいずれも岩手山以外の噴出物で,下位より十和田八戸火砕流堆積物,秋田駒小岩井軽石,秋田駒柳沢軽石,秋田駒堀切軽石が認知されている.上半部の鍵テフラとしては,下位より巣子スコリア,十和田-aテフラ,尻志田スコリア,大川開拓スコリア,刈屋スコリアが認知されており,十和田-aテフラ以外は,東岩手−薬師岳火山起源の噴出物である. 
 下部境界部に平笠岩屑なだれ堆積物,上部に一本木原岩屑なだれ堆積物を介在する.


図2. 分火山灰の代表的に露頭の対比柱状図
(伊藤・土井,2005)を一部修正 
分火山灰の鍵テフラ
十和田八戸火砕流堆積物

定義:中川ほか(1972b)の「八戸浮石流凝灰岩」.宝田・村岡(2004)により十和田八戸火砕流堆積物とされた
模式地:本来の模式地は青森県八戸市であるが,本報告においては岩手山の東部から北部において認められる.
 十和田火山から噴出した大規模火砕流堆積物.少量ながら角閃石と石英を含むのが特徴とされる.噴火年代は約1万5千年と見積もられている(町田・新井,2003).
 岩手山近傍では,秋田駒ヶ岳起源の黄褐色軽石の下位の風化火山灰中に,粒径1cm程度の発泡度の良好な黄白色軽石の散在層として確認されることが多い.
分布図
秋田駒小岩井軽石

定義:中川ほか(1963)の小岩井軽石.給源火山を明確にするために,本報告において秋田駒小岩井軽石とした
模式地:盛岡市小岩井付近.
 岩手山周辺部では,上部あるいは下部に暗青黒色火山砂を伴う赤燈色軽石層である.軽石の粒径は1cm弱で,青灰色スコリアが混在する.
写真
秋田駒柳沢軽石

定義:中川ほか(1963)の柳沢軽石.給源火山を明確にするために,本報告において秋田駒柳沢軽石とした
模式地:滝沢村柳沢付近.
 岩手山周辺部では,明るい黄燈色の発泡の良い軽石層で,軽石粒径も2〜3cm大で比較的大きい.
写真
秋田駒堀切軽石

定義:大上・土井(1978a)の堀切軽石.給源火山を明確にするために,本火山地質図において秋田駒堀切軽石とした
模式地:雫石町堀切付近.
 岩手山周辺部では,暗褐色〜赤褐色軽石層で,軽石粒径は1cm程度で発泡度はやや悪い.岩手山東麓部では下位の秋田駒−小岩井軽石や秋田駒−柳沢軽石よりも薄く,黄褐色風化火山灰質土壌のなかに散在する産状を示すこともある.

巣子スコリア

定義:土井(1990).
模式地:滝沢村巣子付近.
赤褐色の降下スコリア層とそれを覆う細粒火山灰(火砕サージ堆積物)からなる.
詳細解説
生出スコリア

定義:Inoue and Yoshida (1980).
模式地:玉山村生出付近.
 複数の降下ユニットからなる,全体として黄褐〜赤褐色の粗粒スコリア層.
詳細解説
十和田-aテフラ                        

定義:大池(1972).
模式地:本来の模式地は青森県内であるが,岩手火山地質図内においては馬返し登山口駐車場の崖が代表的な露頭である.
 十和田火山から西暦915年に噴火した降下軽石で,火砕流(毛馬内火砕流)を噴出した一連の活動によって放出された.北東北の歴史時代における代表的な大規模噴火活動の産物で,最近の噴火活動や考古学調査における重要な鍵テフラである.
 岩手火山周辺および山体を覆う黒ボク層中に,粒径1mm程度の淡黄白〜肌白色の軽石の散在層あるいは層厚2-5cm程度の断片的な軽石層として認められることが多い. 
 
尻志田スコリア

定義:土井ほか(1999d)が再定義.
模式地:玉山村尻志田付近.
 複数の降下ユニットからなる,黒色で細粒の降下スコリア層および火山灰層.
詳細解説
大川開拓スコリア

定義:土井(1999d).
模式地:滝沢村大川開拓付近
 一本木岩屑なだれ堆積物に覆われる比較的粗粒の降下スコリアで,尻志田スコリアの一部である.

刈屋スコリア

定義:Inoue and Yoshida (1980).
模式地:玉山村刈屋付近.
 下部に細粒火山灰(火砕サージ堆積物)を伴う黒色スコリア層.
詳細解説