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 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門
           
解 説 資 料
地下水総合観測ネットワーク【概要】
地下水等総合観測-地震直前予知を目指して-

南海〜東南海地震のための地下水観測

紀伊半島〜四国周辺の地下水等観測施設の整備

「日本沈没」から生まれた研究者!?地下水は地震の情報屋!?

地下水等総合観測網による南海トラフの巨大地震の予測(PDF)

産業技術総合研究所
地下水総合観測ネットワーク【概要】

はじめに

産業技術総合研究所では地震予知研究を目的として、 地殻変動と地下水変動の関連を把握するために、 地下水観測を 1976年以来継続しています。 古文書、 言い伝え等により地震前兆現象としての地下水異常は数多く報告されています。 そこで、 産業技術総合研究所では東海地震の危険性が指摘されて以来、 それまでの研究成果を元にして、 東海地域に地下水位、 温泉等の自噴量、 水質、 ラドン濃度等の観測網を整備しました。 近畿地域およびその周辺地域においては、 1995年兵庫県南部地震の後に 30 以上の観測井を主に活断層周辺に掘削し、 地下水観測網を整備して観測を継続しています (下:図1)。 これらの観測井からのデータは電話回線を利用して通信し、 産業技術総合研究所で監視を行っています。 また、 東海地域の一部のデータは気象庁に転送され、 東海地震予知のための監視データとして利用されています。

図1
                                    「観測井番号一覧」はこちら(表1)


 東海地域
1975年に測地学審議会の建議により、 地下水による地震予知の研究が本格的に開始されました。 産業技術総合研究所においても東海地震予知のための研究会が始められ、 東海・伊豆地域において、 地下水位、 自噴量、 水質、 ラドン濃度等の観測のための地下水観測網が整備され、 1976年より観測が継続されています。


 近畿地域
1995年兵庫県南部地震の後、 新たに整備された地下水観測網です。 これらのすべての観測井は産業技術総合研究所によって掘削され、 このような目的に最適な単一滞水層の観測が可能なように、 スクリーンは原則として1ヶ所のみに設置し、 地下水位観測を行っています。 また、 いくつかの観測井ではボアホール型3成分歪計、 地震計を観測井底部に設置し、 さらにGPSによる観測井の位置の変動も観測して、 地下水変動理論の把握に努めています。 このシステムは 1998年に完成し、 観測を継続しています。


 紀伊半島〜四国周辺
南海・東南海地震については、約1300年間で9回の地震発生の記録が残っています。 政府の地震調査委員会によりますと、今後30年間の地震の発生確率は東南海地震で60〜70%、 南海地震で60%です(2010年1月現在)。 産総研では2006年度から紀伊半島〜四国周辺に観測点を順次整備しており、2008年度末現在で12点の整備が終了しました。


 観測井
右(図2)に、 観測井の構造および観測機器の設置位置を示します。 また、 一例として根来観測井の外観を下(写真1)に示します。 根来の場合、水晶式圧力型水位センサーは水面下約 5m の位置に設置され、 水温センサーはスクリーンの設置された設置帯水層の深度に設置しています。 また、 地震計および歪計は、 孔井底部にモルタルで固定されています。 GPSアンテナは、 観測小屋の近くに立てられたポールの上部に設置されています。 これらのデータは、 一時的に観測小屋内に設置されたコンピュータ内に貯えられ、 定期的に電話回線を利用して産業技術総合研究所に転送されています。

写真1
 写真1 観測井外観(根来観測井)
図2
      図2 観測井の構造および観測機器概念図


 データ
地下水位は気圧、 雨量等の気象条件によって変動します。 これらの変動は、 通常は地震等による変動より大きいため、 観測データからこれらの影響を除去する必要があります。 そこで、 新たに解析手法を開発し、 地下水位の観測データから地震等による変動を抽出することを可能にしました。
下(図4)は、 1999年5月9日に静岡県中部で発生した地震前後の榛原および草薙の地下水位データを示しています。 グラフ中で榛原、 草薙の水位データは、 それぞれ上側に観測値、 下側に補正値が示されています。
図4


右(図3)に示すように、 地震が大きく、 震源までの距離が近ければ、 地下水位変動が観測されるということが、 榛原観測井における長期の観測結果より解ってきました。 この地震の場合には、 右(図3)に示す境界線に近いため、 変動もわずかしか見られません。 草薙観測井は震源に近いため、 大きな変動が観測されました。 これらの観測データおよび補正法は、 インターネットでも公開しています。

図3
図3:地震のマグニチュードと棒原観測井からの距離


表1

 参考文献
小泉尚嗣(1997):地球化学的地震予知研究について。自然災害科学、J. JSNDS, 16, 41-60, 1997.

小泉尚嗣・高橋 誠・松本則夫・佐藤 努・大谷 竜・北川有一 (2005): 水文学的手法による地震予知研究-地下水変化から地震前の地殻変動を検知する試み− ,地震2,58,247-258.

小泉尚嗣、佃 栄吉、高橋 誠、佐藤 努、松本則夫、伊藤久男、桑原保人、長 秋雄、佐藤隆司(1999):近畿およびその周辺地域における地震予知研究のための地質調査所による地下水位観測、 温泉科学、 49、 18-33、1999.

Matsumoto, N(1992):Regression analysis for anomalous changes of ground wa ter level due to earthquakes, Geophysical Research Letters, 19, 1193-1196, 1992.

Matsumoto, N., Kitagawa G. and Roeloffs, E. A. (2003): Hydrologic response to earthquakes in the Haibara well, central Japan: I. Groundwater-level changes revealed using state space decomposition of atmospheric pressure, rainfall, and tidal responses, Geophys. J. Int., 155, 885-898.

Matsumoto, N, Y. Kitagawa and N. Koizumi (2007): Groundwater-level Anomalies Associated with a Hypothetical Preslip Prior to the Anticipated Tokai Earthquake: Detectability Using the Groundwater Observation Network of the Geological Survey of Japan, AIST, Pure Appl. Geophys., 164, 2377-2396.

高橋 誠(1993):地震予知のための地下水テレメータ観測システム。地学雑誌, vol.102, 241-251, 1993.