aistgsj
第四紀火山>活火山>蔵王
蔵王火山地質図 解説地質図鳥瞰図
9:火山防災上の注意点

 最近の噴火の例から,将来の噴火する可能性が高い地点は御釜であると考えられ,過去の御釜からの噴火と同様の噴火が発生する可能性が高い.御釜を火口とする噴火活動は,記録に残る噴火を参考にすると,次のような 1)から 2)へ進展する確率が高い.1)御釜の変色,湖水温上昇,湖面への硫黄の浮遊,湖面からの水蒸気・噴気(例:1918〜28 年,1939〜43 年の異常).2)水蒸気噴火ないしマグマ水蒸気噴火が発生し降灰.それに伴い火砕サージの発生,爆発により火口湖が溢流し,遠地まで到達するようなラハールが発生する場合もある(例:1894〜97 年噴火).

 噴火は,数ヶ月から数年にかけて休止期を挟んで複数回発生することが多い.水蒸気爆発に始まり,その後マグマ水蒸気爆発へと遷移することもある.しかし,歴史時代以降の事例からは,個々の噴火の規模は比較的大きくなく VEI スケールで 1〜2 程度であると考えられる. とはいっても,広範囲にわたる降灰,火口近傍での噴石の発生と共に,火砕サージも発生するので( Miura et al., 2012 ), 活動中の火口付近は危険である.

 遠地では,降灰による被害のほか,噴火による火口湖の溢流などによるラハールを原因とした,土砂災害や洪水が過去にたびたび発生している.そのため,小さな噴火であっても,山麓部の河川沿いでは被害が発生する可能性が高い.噴火と同時に発生する火口湖の溢流は蔵王火山の活動の特色であり,それへの注意は必要かつ重要である.また,類似火山の例では,噴火により火口湖の水文環境が変化した結果,湖面が上昇,湖水の溢流や火口縁の崩壊などによる洪水の発生などが知られている.そのため,御釜の下流河川沿いは,そのような災害についても注意を払う必要がある.

 記録に基づくと,最近の噴火では山麓への多量な降灰は無かったようであるが,歴史時代には山麓まで火山礫サイズの噴石が降った記録(1230 年噴火)も残る.さらに,歴史時代以降の噴火では溶岩の流出は記録されていないが,最新活動期である活動期 VI 中には溶岩の流出が認められる.そのため,それらの発生も考慮しておく必要がある.また,活動期 VI 中の最大の活動は Za‒To2 テフラを放出した VEI スケールで 4 の噴火である.そのため,直近の活動や最も起こりやすい噴火の進展のみにとらわれず,噴火規模や噴火推移の想定が必要である.



 前をよむ 前を読む 次を読む 次を読む