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有珠火山地質図(第2版) 解説地質図鳥瞰図
4:有珠火山の岩石

 有珠火山の本体を構成している外輪山溶岩は,玄武岩-玄武岩質安山岩であるが,1663年以降の歴史時代に噴出した軽石やドーム溶岩は,流紋岩-デイサイトである

 玄武岩及び玄武岩質安山岩は,暗灰,暗褐灰色で,一般に著しい斑状組織を示し,斜長石,かんらん石,斜方輝石(紫蘇輝石),単斜輝石(普通輝石)などの斑晶を含み,ときに灰長石の大型斑晶(直径2~3cm)を含んでいる.石基は填間(てんかん)状 (intersertal) 又は間粒状 (intergranular) 組織を示し,おもに斜長石,単斜輝石(普通輝石,ピジョン輝石)からなり,少量のチタン磁鉄鉱,クリストバル石,燐灰石,火山ガラスなどを含んでいる.

 流紋岩は,1663年降下軽石(Us-b層)として産し,大部分が白色で発泡のよい火山ガラスからなり,ごく少量の斜長石,斜方輝石,チタン磁鉄鉱などの斑晶を含んでいる.流紋岩質軽石には,このほか,稀に単斜輝石と普通角閃石の斑晶も含まれるが,石英は認められない.

 デイサイトはドーム溶岩,軽石,パン皮状火山弾,火山岩塊などとして産する.ドーム溶岩は,いずれも緻密で淡灰色を呈し,斑晶として一般に少量の斜長石,斜方輝石,チタン磁鉄鉱を含み,石基は填間状又は隠微晶質組織を示し,斜長石,クリストバル石,アノーソクレース,斜方輝石,チタン磁鉄鉱,燐灰石,火山ガラスなどからなる.以上のほかごく稀に石英,単斜輝石,普通角閃石を斑晶として含むことがある.火山岩塊やパン皮状火山弾では石基が一般にガラス質で,軽石は大部分が無色ないし灰白色の多孔質ガラスからなっており,ともにドーム溶岩と同じように斜長石,斜方輝石,チタン磁鉄鉱の斑晶を少量含んでいる.

 有珠火山の代表的な岩石の化学組成を 第2表に示す.外輪山溶岩はSiO2が49~53%で低く,Al2O3,FeO+Fe2O3,CaO,MgOなどに富んでいる.一方,歴史時代の軽石・ドーム溶岩はSiO2が68~73%で高く,一般にAl2O3,FeO+Fe2O3,CaO,MgOなどに乏しい( 第8図).これらに共通した特徴は,アルカリ,特にK2Oに乏しいことである.有珠火山では,SiO2が55~66%の中間組成の岩石が欠如している.外輪山が形成してから,歴史時代の活動が始まる数千年の長い休止期に,極端に珪長質なマグマが生じたのである.

 歴史時代の有珠火山の噴出物は,上述のようにいずれも珪長質であるが,初期のものは最もSiO2に富む流紋岩で,後期のものほどSiO2量がやや減少し,Al2O3,FeO+Fe2O3,MgO,CaO量がやや増加してデイサイトとなっている.本質噴出物のこのような経時的な組成変化は,有珠火山の地下に,下部ほどSiO2量が少なくなるような組成勾配を持ったマグマ溜まりが存在することを暗示する.歴史時代の活動では,このマグマ溜まりの上部から次々に噴出が行われたと考えられる.実験岩石学(実験室で岩石を高温高圧で融解させマグマが存在していた温度や深さなどを調べる研究)からは,有珠火山のマグマ溜まりが深さ約10 kmと深さ約4~6 kmの2ヶ所に存在すること,このうち浅い方のマグマ溜まりが組成勾配を持つことなどが推定されている.


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