aistgsj
第四紀火山>活火山>十勝岳
十勝岳火山地質図 解説地質図鳥瞰図
5:噴出物の岩石学的特徴 - 6:硫黄鉱床及び温泉

5:噴出物の岩石学的特徴

 十勝岳火山群の噴出物は,主にかんらん石玄武岩〜輝石安山岩からなり,少量の黒雲母角閃石デイサイトを伴う.噴出物の全岩SiO2量は49〜66%の範囲をもち ( 第2表),K2O量はMedium-K〜High-Kの領域にある ( 第6図).安山岩〜デイサイトはカルクアルカリ岩系列に属する.

 玄武岩から玄武岩質安山岩は,十勝岳火山群の北東,南西,南東に位置するオプタテシケ,美瑛富士,下ホロカメットク,富良野岳,前富良野岳の各火山に産する.また完新世噴出物の多くは玄武岩質安山岩である.斑晶として, 玄武岩は斜長石,かんらん石,単斜輝石に斜方輝石を少量伴うことがある.玄武岩質安山岩は斜長石,単斜輝石,斜方輝石,かんらん石を持ち,少量の磁鉄鉱を伴うことがある.これらは全岩FeO/MgO値が1.7を越え,多くが2〜2.5を持つことから,玄武岩〜玄武岩質安山岩としては分化した組成である.

 安山岩は十勝岳火山群のほぼ全ての火山に産する.斑晶として斜長石,単斜輝石,斜方輝石,磁鉄鉱を含み,かんらん石を少量伴うことがある.

 デイサイトは十勝岳火山群の中央部に位置する華雲ノ滝溶岩類,十勝岳溶岩に産する.斑晶として斜長石,普通角閃石,磁鉄鉱を持ち,斜方輝石と黒雲母を伴うことがある.

 十勝岳火山群の噴出物は全岩SiO2量の増加に伴って,TiO2 ,Al2O3 ,MgO量は減少し,Na2O,K2O量は増加する傾向を持つ.またFeO/MgOはほぼ一定である.このうち全岩SiO2量に対するK2O量の関係を見ると,新期噴出物は古期と中期の噴出物に比べ,K2Oに富む傾向を持つ.特に玄武岩から苦鉄質な安山岩でその傾向が強い.このようなK2O量の差も,本地質図での活動期区分の根拠に加えている.その他の主成分元素には活動期毎の違いは見られない.


6:硫黄鉱床及び温泉

 中央火口では,明治末期に昇華型硫黄の採掘・採取が開始された.1926年噴火と1962年噴火のいずれの噴火でも,噴火数年前から硫黄の採掘・採取量が増加した.しかし噴火による犠牲及び施設損失のため,1926-28年噴火後に休山となり,その後1955年に再開されたが1962年噴火後は廃山となっている.

 十勝岳火山群の北西側には数ヶ所から温泉が湧出している.泉温は約30℃〜45℃である.このうち吹上温泉では,1988-89年噴火の前後に泉温が高くなる傾向が見られた (北海道立地下資源調査所,1991).


 前をよむ 前を読む 次を読む 次を読む