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第四紀火山>活火山>諏訪之瀬島
諏訪之瀬島火山地質図 解説地質図鳥瞰図
1:はじめに - 2:諏訪之瀬島火山の地形

1:はじめに

 諏訪之瀬島火山は吐噶喇(とから)列島諏訪之瀬島を構成する活火山であり,琉球弧の火山フロント上に位置する安山岩質の成層火山である.島のほぼ中央部には現在活動中の火口(御岳(おたけ)火口)が存在し,記録の残る限り1950年代から現在に至るまでストロンボリ式や小規模なブルカノ式の噴火活動が継続している(気象庁編,2013).

 諏訪之瀬島火山は活発な活火山であるにもかかわらず,最も古い噴火記録は1813(文化10) 年に発生した大規模噴火(文化噴火) についての伝承のみであり,その後の活動に関しても,1990年代までは断片的な記録が残るにすぎない.諏訪之瀬島火山の地質学的な調査は,大正期に大森(1918) による調査が 行われて以降,平吉(1983),平沢・松本(1983) などによる報告がある.また,文化噴火の推移については小林(2000),嶋野・ 小屋口(2001) による報告がある.

 この火山地質図は諏訪之瀬島火山の火山地質について,これ ら現在までの研究成果に加え,新たに地表調査を行った結果をまとめたものである.なお,地球物理的観測結果について は諸機関による観測成果を総合したものであり,京都大学防 災研究所編(2000) 「第3回諏訪之瀬島火山の集中総合観測(平成10年10月)」 等によるところが大きい.


2:諏訪之瀬島火山の地形

  諏訪之瀬島は長径約8.7 km,短径約4 km,面積約28km2であり,吐噶喇列島を構成する島の中では中之島についで二 番目に大きい.諏訪之瀬島の最高点の標高は796 m,周辺の 海底は水深500〜600 mで,火山体の比高は約1400 mである( 第1図).なお,東方沖約10 km,北西沖約10 kmの海底部には,それぞれ最浅部が水深約100 m,300 m前後の高まりが存在する.

 諏訪之瀬島の周囲の海岸線のほとんどは急峻な海食崖で囲まれている.最も古い火山体の1つである富立岳(とんだちだけ)東面の海食崖 は高さ500 mに達する.一方,新しい噴出物や崩壊堆積物が 分布している島東部の作地付近や西部のアカヅミ付近では,海食崖の高さは10〜20 m程度である.また,作地浜や富立岳南東部の海岸には砂浜が発達しており,さらに小規模なものが大船浜,水郷,トータバマ,フカウラ,クロガイ,テイサイバマ,切石,ナハバマに見られる.また,マッコー台周囲や脇山北西の海岸沿いの浅瀬には小規模なサンゴ礁が発達している.

 諏訪之瀬島は活動時期や噴出中心の異なる複数の火山体の集合からなる( 第2図).島の南部を構成するナベダオ火山,北部を構成する富立岳火山は,より古い火山体である.島の中央部を占める御岳(おたけ)火山は諏訪之瀬島の陸上部の大部分を構成する山体で,完新世の火山活動はすべて御岳火山におけるものである.

 富立岳火山は開析の進んだ火山体であり,最高地点を中心として放射状に深い谷が刻まれ,火山体の原面はほとんど存在しない.南部のナベダオ火山は全体として浸食が進んでいるが,山頂部には火口地形が残存している.島南端部のマッコー台は,ナベダオ火山から流下した溶岩流が作る台地状の地形である.

 御岳火山は御岳火口を中心とする北北東-南南西に伸びた楕円錐形の火山体からなる.山頂部から北東〜東方には急崖地形が連続し,現在の御岳火口を取り囲み東側に開いた馬蹄形の崩壊地形を形成している(作地カルデラ).崩壊壁は連続する幾つかのセグメントからなり,南半部では二重ないし複数であるが,崩壊堆積物の分布及び層序から,少なくとも御岳火口の周辺部は文化噴火の末期に拡大したものと考えられる.

 作地カルデラ内の御岳火砕丘は,基底の直径約600m,比高80mで,火口(御岳火口)の直径が約400mの扁平な小型火砕丘である.文化噴火後半以降の噴火活動はすべてこの御岳火口で発生している.御岳の山頂南西には,旧火口と呼ばれる直径約300mの火口が開口している.御岳火山山腹には新鮮な溶岩流地が保存されている.西側の海岸のアカヅミ・大船浜に流下した溶岩流は文化噴火時に噴出した.また御岳火口から東側の海岸にかけては,明治噴火(1884〜85年)の溶岩流が新鮮な溶岩地形を作っている.マッコー台の北縁から元浦港にかけて東北東-西南西方向に伸びる比高約20mの北落ちの直線状の崖地形と,それにほぼ直交する北西-南東方向に伸びる東落ちの崖地形は,それぞれ確実度IIの活断層とされる(活断層研究会編,1991).本地質図におけるこれらの断層の位置は活断層研究会編(1991) に基づく.


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