諏訪之瀬島火山地質図 解説目次
1:はじめに - 2:諏訪之瀬島火山の地形
3:形成史
4:歴史時代の噴出物 - 5:噴出物の岩石学的特徴
6:現在の活動
7:火山観測体制 - 8:噴火活動の特色
引用文献
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7:火山観測体制 - 8:噴火活動の特色
7:火山観測体制
2012年現在,諏訪之瀬島火山の火山活動の観測は,気象庁及び京都大学防災研究所を始めとする大学等によって行われている( 第9図).気象庁では,御岳南側山腹に地震計1点,南麓に空振計1点を設置して火山活動の連続観測を行っている.京都大学防災研究所を始めとする大学では,御岳火口を取り囲む4か所に地震計・傾斜計,集落付近1か所に地震計,空振計,GPSを設置し,連続観測を行っている.また国土地理院による電子基準点が集落付近に設置されている.そのほか,気象庁及び海上保安庁による上空からの目視観測,気象庁による 現地機動観測が随時行われている.
これらの観測結果を基に,2005年2月以降,気象庁は諏訪之瀬島火山の活動度を0〜5の6段階に評価・公表した.また,2007年12月以降は噴火警戒レベルが導入され,2012年現在までの噴火警戒レベルは2(火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生,あるいは発生すると予想される)である.
8:噴火活動の特色
文化噴火以降の噴火はすべて御岳火口から発生している.定常的に火口底まで上昇している安山岩マグマによって,連続的な噴火活動が継続している.目撃記録のある御岳火口の活動は小規模なブルカノ式噴火,ストロンボリ式噴火,灰噴火で,強い爆発が発生した場合には,御岳火口から数km程度の範囲にまで投出岩 塊が飛散する.また噴出した火山砂〜火山灰は風向きにより全島に降下する.
大規模な溶岩流出は明治噴火で発生し,溶岩の一部は海岸まで到達した.御岳火口から再び明治噴火と同様の溶岩流が流出した場合,地形に沿って作地海岸に向かって流下すると考えられる.
文化噴火のような準プリニー式噴火ないしはそれ以上の規模の噴火の頻度は,地質学的手法により解明された噴火史から見ると平均して数百年に一度程度の頻度で発生している.ひとたび発生すると島内の全域に大量の粗粒火砕物が降下することが予想される.また文化噴火のように御岳山頂以外から噴火が発生することも想定される.火口の位置によっては集落周辺にも火砕流等が到達する可能性がある.
諏訪之瀬島の地形から明らかなように,過去に幾度かの山体崩壊を起こしており,今後もこの可能性は十分にある.山体崩壊による岩屑なだれが山麓部に到達する可能性や,さらに海中に流入して津波を発生する可能性もある.文化噴火時のように大規模な噴火に伴い発生することもあれば,噴火以外の要因によって発生することも考えられる.