諏訪之瀬島火山地質図 解説目次
1:はじめに - 2:諏訪之瀬島火山の地形
3:形成史
4:歴史時代の噴出物 - 5:噴出物の岩石学的特徴
6:現在の活動
7:火山観測体制 - 8:噴火活動の特色
引用文献
前を読む 次を読む
6:現在の活動
6.1 噴火活動
明治噴火以降,御岳火口からはストロンボリ式や小規模なブルカノ式,連続的な灰噴火が発生している.噴火の頻度や規模は時間とともに変化しており,やや活発な期間と,比較的静穏な期間が見られる.連続記録が残る1976年以降では,1980〜84年頃,1989年9月頃〜94年8月,2000年末〜2011年4月までの期間に比較的高い頻度で爆発的噴火が発生している.またこれらの期間中にも活動度には強弱が認められる.活動の活発な時期には,御岳火口底には赤熱した溶岩が目撃されている.
6.2 地震活動
諏訪之瀬島火山における火山性地震は,波形や随伴する空気振動の有無から,A型地震,B型地震,爆発地震,火山性微動に分類されてきた(井口,2000).定常的な観測が行われている1989年以降,地震活動は数週間,数ヶ月,数年といった時間スケールで地震活動の消長を繰り返しており,A型地震の増加,B型地震の活発化などが,表面噴火活動の活発化と良い相関を示すことが知られている.
6.3 噴煙・噴気活動
火山ガスの放出量・組成及び火山灰への水溶性付着成分の測定は,集中観測などの機会に観測が行われている.平林ほか(1993)は1989年10月のブルカノ式噴火の火山灰付着成分のF/Cl比から,高温のガス噴出を示唆している.また,平林ほか(2005)ではSO2ガス放出量を概ね数100〜1000トン/日と見積もっている.爆発前後での放出量変化の見積もりを行っており,爆発強度の高い噴火ほど放出量の多いことが示されている.
6.4 地熱及び温泉
御岳火口周辺には地熱地帯が分布しているが,それ以外の地 域での熱活動は不活発である.火口内温度は測定位置や活動度によって大きく変化する (大島・為栗,2000).また,鍵山・ 増谷 (1993) は遠望観測により,噴気活動が噴火活動の活発化 前後に活発化することから,火口直下に帯水層が存在し,マグマ頭位変化によって,これが消長することを示している. 作地地域では海岸からおよそ1 km沢を登った地点で,明治溶岩の直下から比較的高温の温泉が湧出している.泉温は 1952年,1980年,1984年の測定結果があり,43〜49,2℃と 報告されている (太田,1988).そのほか作地海岸付近でも温 泉が湧出している.