火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


後カルデラ期噴火のメルト包有物のH2OおよびCO2濃度

顕微赤外分光光度計で測定したカルデラ噴火(竹島火砕流軽石)および後カルデラ期噴火(稲村岳スコリア,硫黄岳軽石,昭和硫黄島溶岩)のメルト包有物のH2O, CO2濃度(Saito et al., 2001).

メルト包有物のH2O,CO2濃度は,噴火時期や噴火マグマの組成で大きく異なっています.

流紋岩組成のメルト包有物のH2O濃度は,竹島火砕流軽石(約7300年前)は3-5wt%(上の図の紫色の♢),硫黄岳軽石(約500年前)は1.5-3wt%(上の図の赤い△),昭和硫黄島溶岩(1934-1935年)は0.7-1.4wt%(下の図),と噴火時期が新しくなるとともに低下しています.一方,これらのメルト包有物のCO2濃度は,竹島および硫黄岳は40ppm以下と少ないが,昭和硫黄島は70-140ppmと高くなっています.

玄武岩マグマ噴火である稲村岳(約3000年前)のメルト包有物のH2O濃度は1.2-2.8wt%で,硫黄岳と同程度だが,CO2濃度は90-290ppmで,昭和硫黄島メルト包有物よりも高い値を持っています.

この図にはH2OとCO2の混合ガスの溶解度もプロットしてあります.各圧力の流紋岩マグマの溶解度は実線で,玄武岩マグマの溶解度は破線で示してあります.この溶解度線とメルト包有物のH2O, CO2濃度から,マグマのガス飽和圧力が読み取れます.マグマのガス飽和圧力とは,マグマがガスに飽和している,即ち,気相(この場合,H2OとCO2)がマグマ中に存在している場合の圧力です.

図中の溶解度線とメルト包有物のH2O, CO2濃度から,竹島火砕流噴火マグマのガス飽和圧力は80-180MPa,硫黄岳は70MPaと20MPa,稲村岳は70-130MPa,昭和硫黄島は20-50MPaと読み取れます.この圧力は深さにすると,竹島火砕流噴火マグマでおおよそ3-7km,硫黄岳は3kmと~1km,稲村岳は3-5km,昭和硫黄島は1-2kmに相当します.

Saito et al. (2001)のFig.5を改変.

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