火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
メルト包有物
薩摩硫黄島火山の硫黄岳噴火軽石中の斜長石に含まれるメルト包有物(左)と稲村岳噴火スコリア中の単斜輝石に含まれるメルト包有物(右)の光学顕微鏡写真です.数字(3301)やアルファベット(A, B, C, D)で示されているメルト包有物がSaito et al. (2001)によって分析されています.
薩摩硫黄島火山のカルデラ噴火によって放出された竹島火砕流中の軽石や1934-1935年噴火の昭和硫黄島溶岩のメルト包有物も,ほとんどは急冷されており,ガラス質です.ただし,昭和硫黄島溶岩にはガラス質の他に微晶質のメルト包有物も存在します.
メルト包有物には,ガラスとともに,泡が存在するケースがあります.上記の竹島および硫黄岳軽石,昭和硫黄島溶岩のメルト包有物内の泡の体積は,メルト包有物全体の2vol%以下,稲村岳スコリアもほとんどの泡が3vol%以下で,非常に小さいです.これらはshrinkage bubbleと言われるもので,メルトがガラスになった時にわずかに収縮したために生じたと考えられています. ただし,稲村岳のメルト包有物では,7および9vol%の泡をもつものもあります.このような大きい泡はshrinkage bubbleとは考えられず,斑晶がメルトとともに泡を捕獲したものと考えられています.
Saito et al. (2001)のFig.2 から引用.