火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)
空振を伴う地震
左図:2001 年8 月13 日7:41 に発生した噴火地震:(上)観測点 IWOの京大防災研(SVO)速度計,(中)観測点ID560の産総研(GSJ)広帯域地震計,(下)観測点IWOGの京大防災研(SVO)空振計 .
右図:硫黄岳山頂火口縁と観測点ID560で観測した空気振動を伴った地震動:(上)産総研(GSJ)広帯域地震計(観測点ID560),(中)産総研(GSJ)1Hz地震計(火口縁),(下)京大防災研(SVO)空振計(火口縁) .
各観測点に位置については→こちら.
2001年7月の観測から,硫黄岳山頂火口縁において,それまでの調査では確認されたことがない小さな爆発音が10~30分間に1回程度の頻度で聞こえるようになりました.左図は,2001年8月13日に噴火地震と同時に発生した空振の観測例です.空振は京大防災研(SVO)のGPS観測施設(観測点IWOG)に設置した低周波マイクロフォンで観測しています.地震動と空振の到達時間に大きな差があるのは,火口から観測点IWOGまで距離があり,空気中の音波速度は地中を伝播する地震波の速度より遅いために空振の方が遅れて到達するためです.
2001年11月19日~21日に,産総研と京大防災研の共同で,観測点F2に近い山頂火口縁に低周波マイクと1Hz速度計を設置し,火口近傍における空振観測を実施しました.右図はこの観測で記録された空振を伴う地震動の例です.観測の結果,この図のように地震動を伴う空振以外に,地震動を記録していない空振も多いことがわかりました.このことから,爆発音源は比較的地表近くにあり,主に気体膨張による現象と推察されます.また,以前から記録されてきた高周波の極微小地震は空振を伴わないことも確認できました.