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第四紀火山>活火山>御嶽
御嶽火山地質図 解説地質図鳥瞰図
7:監視体制と最近の活動 - 8:防災上の注意点

7:監視体制と最近の活動

 1988年7月1日以来,気象庁が防災のための常時観測を行っている.2024年3月現在,国土交通省中部地方整備局や国土地理院の監視カメラやGNSSなどの観測点も設けられ,その他,名古屋大学や防災科学技術研究所が研究観測を行っている.気象庁の観測点のみでも,地震計9ヶ所,傾斜計4ヶ所,空振計5ヶ所,GNSS6ヶ所,監視カメラ3ヶ所,地磁気計測7ヶ所,火山ガス計測1ヶ所と多数・多項目の観測が行われている.なお,観測点の位置は気象庁のHPにまとめられている.

 気象庁が発令する噴火警戒レベルは,御嶽山では2008年3月から導入され,2014年の噴火をうけて9月27日12時36分にレベル3まで引き上げられた後,2015年6月26日にレベル2,2017年8月21日にレベル1まで引き下げられた.2014年噴火直前以降,しばらくは山頂直下の浅所の地震活動は活発であったが,その後は徐々に低調になっている.また2014年噴火の火口やその周辺で,2014年噴火以降,活発な噴気活動が続き地下の収縮が長期的に認められた.しかし,2023年12月現在,その収縮も収まり地獄谷源頭の噴気活動も低調となり,噴煙高度も低くなっている(気象庁地震火山部,2023).このように2014年の噴火以降,長期的には活動は落ち着く傾向であるが,火山性地震の増加や傾斜変動を伴う火山性微動が発生したため,気象庁は2022年2月23日〜6月23日と2025年1月16日に再び火山警戒レベルを2に引き上げた.


8:防災上の注意点

 完新世の活動は,水蒸気噴火がもっとも頻度が高く,数百〜数十年に一回の頻度でVEI=2以上の噴火が発生している.水蒸気噴火では,火口からの投出岩塊の放出や降灰などのほかに,比較的低温の火砕流や火口噴出型泥流の発生も記録されているので,それらに注意する必要がある.2014年の噴火では火口から約1 kmの範囲に多量の投出岩塊が落下しため,その範囲内で多数の死傷者が生じた.そのため,水蒸気噴火の発生が予想される場合は,少なくとも火口から1 kmの範囲内には立ち入らないことが肝心である.

 マグマ噴火は数千年に一回の頻度と水蒸気噴火より頻度は低いが,これは日本列島の他の活火山と比べると決して低くはないので,その備えも必要である.マグマ噴火が頻繁に起きていないことや水蒸気噴火が頻発する火山であることから,マグマ噴火が起こる場合は,水蒸気噴火で始まりマグマ噴火に移行することが多いと考えられる.完新世のマグマ噴出量は104〜108 m3DREオーダなので,最大としては総マグマ噴出量が108 m3DREオーダのものを想定するべきであるが,106 m3DREオーダのものが一番数は多い.活動は多様で,完新世でも最大106 m3DREオーダの降下火砕物やおそらく最大106 m3DREオーダ規模の火砕流,最大108 m3DREオーダの溶岩の流出などが生じている.そのためマグマ噴火発生時にはそれらへの備えが必要である.


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