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第四紀火山>活火山>那須
那須火山地質図 解説地質図鳥瞰図
2:那須火山の岩石

 那須火山群に産する岩石は,ソレアイト系列に属する玄武岩-安山岩,カルクアルカリ系列に属する安山岩-デイサイトと多様である.甲子旭岳・三本槍岳・南月山火山では,ソレアイト・カルクアルカリ両系列岩が共存し,前者は前期に,後者は後期に卓越する.朝日岳・茶臼岳火山ではカルクアルカリ系列岩のみがみられる.同じSiO2量で比べた場合,ソレアイト系列岩はカルクアルカリ系列岩より,TiO2,Al2O3,FeO*,MnO量が多く,K2O,MgO量が少ない傾向がある( 第1表).

 ソレアイト系列では,玄武岩は暗灰色の緻密な岩石で,斜長石・かんらん石・斜方輝石・単斜輝石の斑晶を含む.安山岩は灰色-青灰色の緻密な岩石であり,斜長石・斜方輝石・単斜輝石・鉄鉱の斑晶を含む.かんらん石斑晶の外側には薄い輝石縁がみられ,斜方輝石斑晶の外側にはピジョン輝石縁が付着している.石基は主に斜長石・普通輝石・ピジョン輝石からなり,少量の鉄鉱・珪酸鉱物・火山ガラスなどを含む.

 カルクアルカリ系列では,安山岩は灰色,デイサイトは青灰色の場合が多く,斑晶に斜長石・斜方輝石・単斜輝石・鉄鉱,ときにかんらん石・石英を含む.ごく稀に普通角閃石がみられる場合がある.かんらん石・斜方輝石斑晶の外側には他鉱物からなる縁(反応縁)が付着していない.安山岩では,複数のマグマの混合を示唆する次のような特徴が斑晶にみられる場合が多く,デイサイトではその中のいくつかが認められる.すなわち,輝石斑晶中にガラス等の異物が包有されること,斜方輝石斑晶の組成の成長パターンに通常とは逆のものが多いこと,斜長石斑晶には清澄なもの・ガラス等の異物を包有するもの・蜂の巣状の形態を示すものが混在すること,石英斑晶は融食形を示し結晶本来の形態を持たないことである.石基は,主に斜長石・普通輝石・斜方輝石からなり,少量の鉄鉱・珪酸鉱物・火山ガラスなどを含む.

 カルクアルカリ系列岩の岩石には,母岩と組成の異なる異質物(苦鉄質包有物)が含まれる場合が多い.この包有物は径20cm程度以下で,外形は球状のものから不定形のものまで変化に富み,白灰色-灰色のを呈し,少々発泡している.また,斜長石・かんらん石・斜方輝石・単斜輝石の斑晶を含み,石基は主に針状の斜長石・斜方輝石・単斜輝石とガラスからなる.茶臼岳火山噴出物中の苦鉄質包有物のSiO2量は,52.5-55.5wt%である( 第2図).多くの溶岩に含まれるほか,包有物そのものが火砕物として産出する場合もある.

 甲子旭岳・三本槍岳・南月山火山のようにソレアイト,カルクアルカリ両系列岩が同じ火山で見られる場合,両者のRb/Yなどの比が,同じFe/Mg比で比較した場合にも異なることが多い,これは両者の源となったマグマが異なっていたことを意味している.また,茶臼岳や朝日岳火山のようにカルクアルカリ系列岩が単独で存在する場合は,近接するソレアイト,カルクアルカリ系列が共存する山体の両系列の組成変化経路を結ぶ組成変化経路を取る(第3図 第3図).岩石組織の特徴も考え合わせると,茶臼岳火山の岩石は,上記の両系列をもたらした複数のマグマの混合によって形成されたと考えられる.


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