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那須火山地質図 解説地質図鳥瞰図
5:火山活動の監視体制 - 将来の活動の予測

火山活動の監視体制

 宇都宮地方気象台那須岳火山観測所が東南山麓の黒磯市内にあり,茶臼岳山頂の東南東1.9kmの地点にある地震計を,常時テレメータ観測している.また,茨城県つくば市の防災科学技術研究所でも,茶臼岳山頂の北東1.2kmの地点に地震計を設置し,テレメータして常時観測を行っている.


将来の活動の予測

 茶臼岳火山では総噴出量が岩石換算体積で1km3を越える大噴火は,最初期(約1.6万年前)に起きただけで,その後は時間とともに一回のマグマ噴出量が小さくなる傾向が認められる( 第5図).したがって,このような活動が統く限り茶臼岳火山の将来の大噴火の可能性は,極めて低いものと判断されよう.一方,総噴出量が岩石換算体積で10-1-10-2km3程度の中噴火は,茶臼岳火山では数千年間隔で繰り返し発生しており,今後もその発生が予測される.中噴火の活動様式は第5章に示したように,ブルカニアン噴火・火砕流・溶岩流を伴う確率が極めて大きく,山麓でも直接・間接の火山災害が発生しよう.ただし,このような爆発的噴火がいきなり始まるわけではなく,マグマ噴火の数年前から前駆的な水蒸気爆発が始まるものと予想される.

 最後の中噴火は1408 - 1410年に起きており,今のところ約6百年が経過したにすぎない.マグマの噴出を伴わない小噴火(岩石換算総噴出量が10-2-10-3km3)の最近の5千年間での発生頻度は,数百年に1回の割合である.小噴火では山頂部周辺にかなりの降灰が予測され,谷沿いに土石流が発生する可能性が大きい.最後の小噴火は1881年に起きており,今のところ約百年が経過したにすぎない.これらに対し,総噴出量が岩石換算体積で10-4km3以下の微噴火は,現在の茶臼岳で最も発生の確率の高い規模の噴火であろう.最後の微噴火は1963年に起きているが,噴火地点(茶臼岳山頂西側と北西側の火口内)の噴気活動は現在も衰えていない.噴火の際には,火口の周辺数百m内で火山岩塊・火山礫の落下が予測され,山頂付近の登山者が被災する可能性がある.ただし,この規模の噴火では山麓で直接・間接の火山災害が発生することはほとんどない.


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