三宅島火山地質図 解説目次
1:はじめに - 2:三宅島火山の地形
3:三宅島火山の噴火活動史
4:2000年噴火・山頂陥没
5:三宅島火山の岩石
6:将来の活動と災害の予測 - 7:火山監視・観測体制
参考文献
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第8図 最近1万年間の三宅島火山噴出物の全岩SiO2とK2Oの関係
(津久井ほか,2002).
5:三宅島火山の岩石
三宅島火山の噴出物はSiO2=48.5wt%(重量%)の玄武岩から63%の安山岩まで広い範囲にわたり,ソレアイト質マグマの特徴を示す.噴出物の岩石学的特徴は先に述べた活動期と密接に対応している( 第8図).大船戸期の岩石は,SiO2=48.5~54.5wt%,20(体積)%以上の斜長石+かんらん石±普通輝石の斑晶をもつ玄武岩を主とする.坪田期の噴出物は,SiO2=55~63wt%の安山岩であることが特徴で,斑晶鉱物組合せは斜長石+普通輝石(±かんらん石)に加えて紫蘇輝石,磁鉄鉱を含む.斑晶量は7~27%である.雄山期以降の噴出物のほとんどは,斑晶量の少ない(<10%)SiO2=51~57wt%の玄武岩-安山岩であり,斜長石+かんらん石+普通輝石±紫蘇輝石±磁鉄鉱を斑晶にもつ.雄山期最初の八丁平噴火は,SiO2-酸化物図上で直線的な組成変化を示すことから坪田期の安山岩質マグマと新たな玄武岩質マグマが混合したと推定される.八丁平噴火後の雄山期の噴火年代と全岩化学組成の変化を見ると,マグマの組成が突然未分化になった(Mg#(=Mg/(Mg+Fe)×100)が急に増加した)後に時代とともに徐々に分化が進行する(Mg#が徐々に減少する)サイクルを繰り返してきた( 第9図).それぞれのサイクルは雄山期・新澪期の開始と一致する2,500年前,500年前と雄山期中ごろの1300年前に始まる.
2000年の噴出物は,1983年噴出物に良く似た分化の進んだ阿古沖の噴出物と,明らかにMg#が高い8月18日の火山岩塊の2種類がある.後者は2000年噴火が新たな噴火期に入った可能性を示している.