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伊豆大島火山地質図 解説地質図鳥瞰図
2:伊豆大島火山の地質
古期火山群

 島の北海岸から東海岸にかけての海食崖には,浸食された3つの成層火山が露出し,北から,岡田火山,行者窟(ぎょうじゃのいわや)火山,筆島火山と呼ばれている.これらの火山の活動年代はわかっていないが,第三紀鮮新世末から更新世と考えられている.岡田火山は島内北部の岡田港の西から乳ヶ崎にかけての海食崖に断片的に露出し,主に玄武岩溶岩流・火砕岩と岩脈からなる.行者窟火山は大島公園南の東部海食崖に露出する2・3枚の厚い玄武岩溶岩流とそれに挟まれる薄い火砕岩層からなる.筆島火山は行者窟火山の南から筆島対岸の海食崖に露出し,玄武岩溶岩流,火砕岩と多数の岩脈からなる.筆島は筆島火山の火道角礫岩が侵食から取り残されたものと考えられている.これらの古期火山群の相互の関係はよくわかっていない.

伊豆大島火山

 伊豆大島火山は現在のカルデラ地形形成以前の先カルデラ火山と,カルデラ形成・後カルデラ火山に区分できる.

 先カルデラ火山の活動は約3-4万年前に海底噴火活動で始まった.この活動で,粗粒な火砕物を主とし,少量の玄武岩溶岩流,降下火砕物を伴う先カルデラ火山古期山体(泉津層群)が形成された.古期山体堆積物は島の北・東部海食崖に主に露出するほか,南西部の海食崖にも一部露出している.

 先カルデラ火山新期山体(古期大島層群)の活動は約2万年前から始まり,古期山体の堆積物を覆って厚く堆積している.新期山体は主に降下スコリア堆積物,溶岩流からなり,古期山体と比べると比較的穏やかな噴火の産物であるといえる.島の南西部の都道沿いの「地層切断面」( 第1図)では新期山体を構成する約100の部層を見ることができる.平均噴火間隔は150年ほどと考えられている.いくつかの部層には山頂での大規模な水蒸気爆発によると考えられる火山豆石,角礫を含むものがある.

カルデラ

 伊豆大島火山のカルデラはカルデラ壁の相互の関係から,少なくとも4つの環状構造が複合しているらしい.現在見られるカルデラは約1,300-1,500年前に起こった山頂部での爆発的噴火により最終的な地形が作られた.同様の堆積物は新期山体のO41部層(約7,800年前)にも見られ,現在のカルデラ形成以前にも同じような活動があったらしい.東側のカルデラはほぼ完全に後の噴出物に埋積されて顕著なカルデラ地形は示さないが,水系分布などでカルデラ縁の位置が推定できる.

側火山

 側火山は確認できるものだけで80個以上存在している( 第2図).このほかにも地形的に側火山と推定されるものもあるが,厚い降下火山灰層に覆われていて露頭で確認できないものも多い.側火山の多くは岳ノ平,蜂ノ尻などのようなスコリア丘で,溶岩流を伴い,また一つの噴火割れ目に沿って並んで形成されている事も多い.海岸線に近いおよそ標高100m以下の地点では,マグマと地下水の反応によりマグマ水蒸気爆発を起こして爆裂火口やタフリングを形成していることもある.

 北北西-南南東方向に側火山が多く分布するため,伊豆大島はこの方向に伸びた形をしている.この方向は地震の発震機構等から推定される伊豆大島周辺の地殻応力の水平最大圧縮軸方向とほぼ一致する.これは北北西-南南東方向に強く押されているために,上昇してきたマグマがその方向に伸びる割れ目を作りやすいだめとされている.


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