イベント年代に関する原著の記載を読み取り、次の3段階に区分した。
(1) | 確実 | (definitive) |
(例) | 確実である、限定される、読み取れる、など、目安として80%以上の確率. | |
(2) | 推定 | (probable) |
(例) | 推定される、考えられる、思われる、など、目安として50-80%の確率. | |
(3) | 可能性 | (possible) |
(例) | 可能性がある、かもしれない、仮定すると〜となる、など、目安として30-50%の確率. |
活断層の断層面はある傾きを持って地下に連続するが,その傾斜の変化を平均化し,地表から地下の地震を発生させる層の基底までを一つの面で近似したときの傾斜を一般傾斜と呼ぶ.
活断層の断層面が水平面と交わる線の方向のことで,ほぼ地表の断層線の方向とほぼ一致する.この線を直線で近似したときの方向を一般走向と呼ぶ.
炭素が大気から海水中に取り込まれてから,生物中に取り込まれて固定されるまでの間には,無視できない長さの時間が経過している.そのため,海水中の生物遺骸から得られた14C年代は,実際にその生物が死亡してからの年代より古い値を示すことが知られている.これを海水のリザーバー効果という.その値は海域や時代により異なるが,日本近海では400年程度とされている.
活断層であるかどうかの確からしさを,その認定根拠によってランク分けしたもの(活断層研究会,1991).地形・地質などから活動の明確な証拠が確認されており,活断層であることが確実なものを確実度I,活動の証拠がやや間接的または断片的で,活断層であることが推定されるものの,その信頼度がやや劣るものを確実度II,活断層である可能性はあるが,活動の証拠に乏しく,河川の浸食などの他の原因で生じた疑いがあるものを確実度IIIとする.
活断層の活動の繰り返しの中で,個々のが単独で破壊する場合と,隣り合う複数の活動セグメントが連鎖的に活動する場合があるとするモデル(WGCEP, 1995).
最近の地質時代に繰り返し活動し,今後も活動する可能性のある断層のこと.このデータベースでは,約10万年前以降に繰り返し活動した痕跡のある断層を活断層として扱っている.なお,今後の活動について考慮すべき将来の期間の長さに応じて,活断層の定義に用いる過去の期間の長さが異なることがある.
活断層を,過去の活動時期,平均変位速度,平均活動間隔,変位の向きなどに基づいて区分した断層区間のこと(behavioralsegment: McCalpin, 1996).固有地震を繰り返す活断層の最小単元と考えることができる.
活動セグメントを構成する断層線群の東西端,南北端間の距離を計測し,そのうちの長い方の両端点を活動セグメントの端点とした.下図の例では,AB,CDの距離を比較し,長い方のC,Dが端点となる.
活動セグメントの端点から計算した直線距離.小数点以下第一位を四捨五入した.
活断層の活動性を平均変位速度を基準にしてランク分けしたもの(活断層研究会,1991).平均変位速度が1,000年あたり1-10mのものをA級,0.1-1mのものをB級,0.01-0.1mのものをC級と呼ぶ.平均変位速度尾が具体的に求められない場合でも,断層による変位地形の鮮明さなどに基づいて,活動度が推定されることがある.
活断層は,条件により単独で活動したりいくつかの断層が同時に活動することが知られている.松田(1990)は断層線の位置関係により,まとまって1つの地震を発生させる可能性が高い断層のグループを定義し,これを起震断層と呼んだ.カスケード地震モデルに基づけば,同時に破壊しうる活動セグメントの組み合わせのうちで,最も起こりうる組み合わせと見なすことができる.
政府の地震調査研究推進本部が「地震に関する基盤的調査観測等の計画について」の中で,効率的に活断層調査を実施することを目的として選定した活断層で,2005年3月現在98の断層および断層帯が選定されている.地震調査研究推進本部地震調査委員会では,これらの活断層について,長期評価を順次公表している.
活断層の長期的な変位の累積の大部分は,活動セグメントの全体を破壊するような活動によってまかなわれていると考えられている.このような断層活動に伴って発生する地震を固有地震と呼ぶ.固有地震を下回る規模の地震では地表には明確な断層のずれ(地震断層)が現れないことがある.
ある活断層が最も最近に固有地震を伴って活動した時期のこと.この時期と平均活動間隔から将来活動確率を計算することができる.
ある活動セグメントの最新活動時期から現在までの年数(経過時間)を,その活動セグメントの平均活動間隔で割った値.この値が1に近づくと次の活動時期(=地震)が近いことを示す.なお,1回ずつの活動間隔にばらつきがあること,および野外で得られた個々のデータに幅があることにより,地震後経過率が1を超えることもある.
地震に伴って地表に変位(ずれ)をもたらした断層のこと.地下の震源断層の一部が直接的あるいは間接的に地表に達したもので,地表地震断層と呼ばれることもある.
活断層は繰り返し活動するために,平均活動間隔と最新活動時期が判明すれば,将来の活動時期を予測することが可能となる.しかしながら,実際の活動間隔にはさまざまな要因によるばらつきがあることが知られている.このばらつきを考慮して,将来の一定期間内に活動する可能性を確率で示したものが将来活動確率である.
地震を発生させた地下の断層のこと.震源断層の一部が直接的あるいは間接的に地表に達したものを地震断層と呼ぶ.
活断層が1回の活動(=地震)で変位する量のこと.で,固有地震に伴う単位変位量は,ある地点ごとにおおむね一定であると考えられている.また,ある活動セグメントの単位変位量の平均的な値は,その長さと比例関係があることが示されており(粟田,1999),この経験式を用いて単位変位量を見積もることができる.
河川や海岸沿いの平地が,地面の隆起や海面の低下によって高台になった地形を段丘と呼ぶ.
同じ高さの段丘はほぼ同時に形成されたと言えるため,断層のずれの指標とすることができる.
段丘の形成年代については,段丘の相対的な高さでおよその年代を推定できるほか,段丘面の上に分布する火山灰層などを調べることにより知ることができる.
活断層が,過去において固有地震に伴って活動したこと.とくに地質学的な過去の活動の証拠は,断層が活動した時点の地表面が,地層内のある層準における変位や変形の不連続となって記録されていることが多く,この層準を(断層活動)イベント層準と呼ぶ.
活断層が固有地震を伴う活動を繰り返すときの平均的な時間間隔のこと.1回ごとの活動間隔にはさまざまな要因によるばらつきがあることが知られているため,将来の活動時期の予測などには複数回の活動間隔の平均値と,そのばらつきを考慮する必要がある.
活断層の活動性を示す指標で,その認定に用いた基準となる地形や地層の変位量を,その形成時期からの時間で除した値のこと.通常は1,000年あたりの変位量として示す.平均変位速度が同じでも,単位変位量が小さければ平均活動間隔は短くなり,単位変位量が大きければ平均活動間隔は長くなる.
本データベースでは、活動セグメントの活動性について具体的な数値がない場合、地形表現から経験的に活動度を判断し、次の値を仮置き値として与えた.
活動度 | 平均変位速度の仮置き値(m/千年) |
---|---|
A級 | (仮置き値はなし) |
A級下位 | 1.0 |
B級 | 0.5 |
B級下位 | 0.3 |
B級最下位 | 0.1 |
C級 | 0.0 |
活断層の活動により,断層面の両側の岩盤が互いに相対的に移動すること.地表では地面の段差や食い違い,広い範囲の撓みなどとなって現れる.
活断層のずれによる相対的な移動の量である.変位量は上下(鉛直)成分,水平方向成分に区分され,さらに水平方向成分は横ずれ(走向方向)成分と傾斜方向(走向と直交方向)成分に区分される.それら3成分のベクトル和が実変位量(ネット変位量)である.
将来活動確率を求める際の確率モデルの1つで,過去の活動時期によらず,断層が活動する確率は常に不変であるとする考え方に基づくため,最新活動時期が不明の場合でも将来活動確率を計算することが可能である.ただし,この方法で得られた将来活動確率は,過去の活動時期にとらわれずに地震が発生するという仮定に基づいていることに注意が必要である.BPT分布モデルを用いたものと比較して,地震後経過率が小さい場合には高い確率値が,地震後経過率が大きい場合には低い確率値が得られる.
歴史地震とは歴史記録に記された大地震のこと.通常,江戸時代以前の歴史記録には,被害の記録しか残されないため,地震を発生させた断層を直接知ることはできない.したがって,活断層の過去の活動と対比するには,被害全容を把握するなどして,震源の場所を特定する必要がある.また,中世以前については,記録の欠落や誤記等があることにも注意が必要である.
14C年代は,過去における自然放射能の増減の影響を受けるため,実際の暦年代との間に若干のずれが生じる.このずれを補正するために,年輪年代データ等に基づいて,14C年代から暦年代への較正手法が開発されている.その方法を用いて14C年代から推定した暦年代を暦年較正年代と呼ぶ.
将来活動確率を求める際の確率モデルの1つで,活動間隔の分布モデルにBrownian Passage Time(BPT)分布を用いて将来活動確率を計算する.地震調査研究推進本部の長期評価ではこの計算方法が採用されている.
放射性炭素同位体年代とも言う.自然界の炭素には放射性の炭素(14C)がある一定量含まれている.この炭素は放射壊変をおこし一定割合で減少していくため,残存する放射性炭素の量比を測定すると,この炭素を含む物質が外界から遮蔽されてからの年代を知ることができる.
14C年代測定法には,現在主流である2つの方法がある.1つは液体シンチレーションカウンターを用いる方法で,在来法とも,β線計数法とも呼ばれる.もう1つは加速器(Acceleratornmass spectrometry:AMS)を用いる方法で,より少量の炭素でも年代測定が可能である.ごく少量の試料で測定するため,試料の再堆積や異物の混入,試料の汚染などの影響を受けやすい難点もある.