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樽前火山地質図 解説地質図鳥瞰図
6:火山活動の監視体制 - 7:火山防災上の注意点

6:火山活動の監視体制

 樽前火山では気象庁が噴煙高度と火口温度の測定を継続的に実施している(気象庁,2005).地震及び傾斜,空振の観測が気象庁,北海道大学,防災科学技術研究所により実施されており,火口北東麓及び南麓の施設は横坑内に設置され,高精度の観測を行っている.GPSによる地殻変動観測は気象庁及び国土地理院によって行われている.また火山監視カメラが気象庁,北海道大学により設置されている.


7:火山防災上の注意点

 樽前山の個々の噴火は,中〜大規模のプリニー式噴火で噴煙柱から降下軽石や火山灰を遠方まで堆積させ,近傍では火砕流が流下することで特徴づけられる.溶岩の流下や溶岩ドームの形成は稀である.大規模なプリニー式噴火での噴出量は1km3を超えており,山麓部の居住域では火砕流や火山泥流,そして厚い降下軽石による被害が想定される.また,現在の樽前山の周辺は,空港に加え大規模な港湾施設や工業団地があり,JR・国道・高速道路などの幹線が走る,北海道の交通・経済の要所である.これらでは火砕流などによる直接的な被害は考えにくいが,降灰による大きな影響が続くことが予想される.

 樽前山の活動を長期的に見た場合には,休止期を挟んでの明瞭な噴火活動期が認められることが特徴である.2500年前の活動では,大噴火が短い休止期をおいて連発した後,中規模噴火があり,休止期に移行した.9000年前の活動期では中〜小噴火の存在は確認されていないが,大噴火が連発して休止期に移行している.現在は3回目の噴火活動期にあると考えられ,19世紀からは中〜小規模の噴火が相次いでおり,2500年前の活動期の後半と似ている.過去2回の活動期を考えると,短〜中期的に見て17〜18世紀の大規模噴火が起こる可能性は低く,19世紀から続く中〜小規模噴火が起こりうると考えるべきであろう.これらの噴火では,居住域での火砕流や降下軽石による災害の可能性は低いが,場所によっては火山泥流の影響が考えられる.しかし,中〜小噴火であっても,樽前山の場合には空中に飛散した火山灰によって航空路に大きな影響を与える可能性が高く,注意が必要である.


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