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日光白根及び三岳火山地質図 解説地質図鳥瞰図
1:はじめに - 2:日光白根及び三岳火山と周辺の地質概要

1:はじめに

 日光地域は東北日本弧南部に位置し,東西30 km,南北15 km ほどの範囲に十数個の第四紀火山が形成されている ( 第1図).このうち日光白根,三岳及び男体火山は,完新世に噴火が発生した.日光白根火山は,これら3つの火山の中で唯一噴火記録が残り,比較的最近では,1873年及び1889~90年に噴火が発生し,栃木県側へ降灰,群馬県側にラハールが流下した.1952年には噴気活動が活発化したが,噴火には至らなかった.その後も1993~95年と2001年,また2011年の東北地方太平洋沖地震後に地震活動が活発化しており,今後も噴火が発生する可能性が高い火山である.

 日光白根火山の地質については,齋藤 (1899),山崎 (1958) 及び佐々木ほか (1993) によりまとめられているが,具体的な活動時期は明らかにされていなかった.また,降下テフラから過去6千年間において複数の水蒸気噴火及びブルカノ式噴火があったことが指摘されていた (奥野ほか,1994) が,これらと山体構成物の関係は不明であった.本火山地質図では,地形判読,地質調査及びボーリングコアの検討を基に,山体構成物の被覆関係を再検討したほか,山体構成物と噴火年代が決定された山麓の降下テフラとの関係を明らかにすることで複数の噴出物について噴火年代を決定し,活動史を構築した.また,三岳火山は,本研究により完新世に噴火したことが明らかになったので,この結果も合わせて述べる.


2:日光白根及び三岳火山と周辺の地質概要
2.1 日光地域の基盤岩類
 本地域は,北西部は前期白亜紀の戸倉沢層,中央~南東部にかけては白亜紀末~前期古第三紀の中禅寺アダメロ岩及び奥日光流紋岩類を基盤とし,それらを後期中新世の片品川流紋岩類,香沢層及び鬼怒川流紋岩類が覆う (山口・高倉,1988).本火山地質図の中央部は中新統が分布し,それらを主な基盤として第四紀火山が発達している.

2.2 日光白根及び三岳火山周辺の第四紀火山
 日光地域の第四紀火山は,底径数 km の複数の複成火山及び単成火山からなる.山崎 (1958) は,これらの第四紀火山のうち開析の進んでいない13火山を日光火山群と呼んだ.一方,噴出物の年代測定技術の発展により,これと同時期に形成された複数の火山が確認され,形成年代は 第1図のように整理された.日光白根,三岳及び男体火山はこれらの火山の中で,3万年よりも若い火山である.

 日光地域西部には,前期更新世に活動した三ヶ峰,四郎岳,錫ヶ岳,笠ヶ岳,白根隠,沼上火山が分布する.これらの多くは開析と侵食が進んで火山地形が失われている.チバニアン期~後期更新世にかけて活動の中心が東部に移動し,螢塚西,温泉ヶ岳,於呂倶羅,金精,女峰赤薙,山王帽子,太郎火山などの各火山が形成した ( 第2図).後期更新世に形成した大真名子,小真名子,丹勢火山は,男体火山に覆われる.

 男体火山は後期更新世~完新世に活動した複成火山である.その活動史は,玄武岩からデイサイトの主成層火山体を形成した第1期 (2.4~1.7万年前),大規模な降下火砕物及び火砕流堆積物を噴出した第2期(1.7万年前),山頂火口からの御沢溶岩の流出と,比較的小規模な火砕噴火を起こした第3期 (1.4万~7千年前) の,大きく3期に区分されている (石崎ほか,2014).男体火山の最新の活動は,7千年前のマグマ水蒸気噴火で,それ以降は確認されていない.本火山地質図内には,第1期の主成層火山体噴出物 (Ns),第2期の志津スコリア流及び竜頭滝・荒沢軽石流堆積物 (Sra),第3期の御沢溶岩 (Os) が分布する.第2期の火砕流堆積物は,傾斜が急な男体火山の斜面では志津スコリア流堆積物が厚く,その上位の竜頭滝・荒沢軽石流堆積物は薄いが,傾斜の緩い戦場ヶ原周辺などでは竜頭滝・荒沢軽石流堆積物が厚く分布する.なお,男体火山の活動史の詳細については,高橋ほか (2009),石崎ほか (2014) を参照されたい.

 三岳火山は完新世に噴出した溶岩ドームで,竜頭滝・荒沢軽石流堆積物を覆っている.

 日光白根火山も男体火山とほぼ同時期から活動を開始したが,現在も火山活動が継続している.なお,螢塚西火山 (Kw) は,従来日光白根火山の一部とされてきたが,開析が進み溶岩地形が失われ,2万年前頃から成長した日光白根火山の噴出物とは火山地形の新鮮さが大きく異なる.したがって本研究では,螢塚西火山を不整合に覆う火山体を日光白根火山として定義し活動史を述べる.


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