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草津白根火山地質図 解説地質図鳥瞰図
5:噴火の予知・防災と火山の恩恵

 歴史に記録されている草津白根火山の火山活動は,すべて水蒸気爆発である.この火山の周辺には硫化水素などの火山ガスを放出している噴気活動もある.これらの活動は,1982年に小爆発があったように,今後 も続くことであろう.硫化水素に対する自動監視・警報装置が設置されて活動中であることは既に述べた.噴火活動に対しても,常時監視を行って,災害が起こらないように対策を立てなければならない.

 1976年の水釜の爆発の際には,地球化学の項で述べたように,火山ガスや湖水の化学組成に前駆的変化が観測された.また,赤外熱映像による放熱量分布の調査では,爆発地点付近には,3年前から熱的異常が 生じていることが分った.水蒸気爆発に伴って微小な火山性地震の発生も報告されている.又,1974年には湯釜湖底に溶融硫黄の存在が確認され,注意を喚起されていた.

 国の火山噴火予知計画に基づいて1978年に,気象庁は水釜付近に地震計を設置し,テレメーターによる地震の常時観測が始められた.しかし,噴火予知の科学の現状では,この火山で起こるような小規模の水蒸 気爆発を確実に予知することは容易でない.草津白根火山では,爆発自体は小規模であっても,観光客が火口縁まで容易に訪れることができるので,不測の場合にそなえた防災対策も必要である.

 一方草津白根火山は災害をもたらすだけではない.この火山の周囲には,湯量・温度・成分とも一級の温泉がいたるところに湧出し,草津・万座などの有名な温泉地が開かれた.殺生河原などの噴気活動や,湯 釜など山頂付近の景観,周辺の美しい高原は,温泉とともに,四季を通じて観光・スポーツに多くの人を集めている.温泉活動はまた,鉄や硫黄などの資源を生み,鉱山として採掘された.

 最近では,新しいエネルギー源としての地熱エネルギーが注目され,すでに草津温泉街において道路融雪のための地熱利用が行われているほか,石津地区では調査井の掘削を含む概査も行われた.


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