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第四紀火山>活火山>草津白根
草津白根火山地質図 解説地質図鳥瞰図
3:草津白根火山の岩石

 草津白根火山を構成している岩石の大部分は,日本の火山で最も一般的な輝石安山岩であり,一部に輝石デイサイトがある.これは,安山岩とデイサイトという二種類の異なる岩石があるというわけではなく,化学組 成の上でやや幅のある(SiO2=54-65%)一連の火山岩のうち,SiO2量の少ない方の岩石(約62%以下)を安山岩,SiO2 量の多い方の岩石(約63%以上)をデイサイトと区別したものである(用語の欄を参照).草津白根火山の各噴出ステージの岩石の代表的な化学組成を表1を拡大する 第1表に示す.草津白根火山の岩石のなかで,白根溶岩を除く中期溶岩類,新期溶岩類の中の香草溶岩の一部そして火砕流(太子・谷沢原)の岩石は,一般にSiO2 量に富んでおり(58-64%),その他の岩石はSiO2量にやや乏しい(54-59%)傾向がある.草津白根火山の岩石はすべて,斑晶に富んでおり,径1-2mmの白っぽい透明な斜長 石と,黒色にみえる2種の輝石が,暗黒色(例えば殺生溶岩)から灰白色(例えば青葉溶岩)まで変化に富む石基の中に,ポ ツポツと点在しているのが肉眼でもよく観察できる.

 斑晶鉱物として,すべての岩石に,斜長石・紫蘇輝石・普通輝石・チタン磁鉄鉱がふくまれて,そのほか多くの岩石に石英・かんらん石がみられる.一部の岩石にまれに普通角閃石がみられることがある.新 期溶岩の中の香草溶岩には,少量だが黒雲母の斑晶がふくまれるが,常に斜長石・紫蘇輝石・普通輝石・チタン磁鉄鉱からなるコロナにとりかこまれている.

 石基は,SiO2量の少ない岩石(60%未満)では,細粒の斜長石・輝石・珪酸鉱物及び,それらの間をうめる褐色のガラスからなる.SiO2量の多い岩石(60%以上)では,石基は一般にガラス質であり,無色透明なガラスと少量の針状の斜長石や輝石の細かい結晶からなっている.一部では,ガラスが脱ガラス化し,球顆と呼ばれる微細な針状結晶の放射状集合体が形成されている.中期溶岩の青葉溶岩・平兵衛池溶岩と新期溶岩の香草溶岩とは,岩相の変化が激しく,一枚の溶岩流の中でも,安山岩質の部分(暗褐色)とデイサイト質の部分(灰白色)があり,一部には,両者が10-30cmの幅で縞状に重なり合っている部分もみられる.顕微鏡下でも,両者が複雑に混じり含っている組織がみられ,安山岩質な部分とデイサイト質な部分とで,斑晶鉱物の組合せが異なる場合もみられる.これらの溶岩は2種類の化学組成の異なるマグマの混合によって形成されたものと考えられる.


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