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第四紀火山>活火山>九重
九重火山地質図 解説地質図鳥瞰図
4:歴史噴火

4.1:歴史時代の噴火
 文献記録として残されている九重火山における火山活動としては,寛文二(1662)年,延宝三(1675)年,元文三(1738)年,安永六(1777)年のものが知られているが,いずれも噴気の突出もしくは地熱地帯の表層爆発現象と考えられており(井村・鎌田,1996),これらに対比される堆積物は確認されていない( 第1表).


4.2:1995〜96年噴火
 1995年10月11日夕方に,星生山北東の硫黄山付近から火山灰の放出が始まった.噴煙高度は約1000 m に達し,西方向に主に流れて熊本県南小国町などのほか,約70 km 離れた熊本市でも降灰が確認された.火山灰の放出は12日未明にはほぼ収まった.火口は N80°W,ほぼ東西方向の長さ約 400 m の線上に並んだ火口列で,詳しく見ると雁行するミ型の割れ目(a1〜a3 火口列,b火口列,c1〜c4 火口列,及び d火口,e火口) が発達する( 第9図).最も西側の a1,a2 火口からは小規模な泥流が発生した.火口近くでは噴出物が数十cm の厚さで堆積しており,噴出物は湿った粘土質火山灰,変質火山礫からなり,肉眼で確認できる大きさの軽石などは含まれていない(星住ほか,1996).その後12月18日と22日にも火山灰の放出があり,東に14 km 離れた大分県直入(なおいり)郡直入町(現 竹田市直入町)にわずかな降灰があった.1996年1月13日夜から14日朝にかけて,及び3月中旬にもごく微量の火山灰降下があった.平行して九重火山西方筋湯付近,星生山付近で地震が多発し,一部は有感となったほか,星生山北方を中心とする山体の収縮が観測された.火山性微動は1997年まで時々観測された(気象庁,2013).

 この噴火は,噴火当初は新鮮な発泡ガラス(マグマ物質)をほとんど含んでいなかったが,1995年12月以降は微量の新鮮な発泡ガラスを含むことから(中田ほか,1996; 波多江ほか,1997),水蒸気噴火からマグマ水蒸気噴火に移行したと考えられる.


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