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霧島火山地質図 解説地質図鳥瞰図
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1:はじめに - 霧島火山周辺の地質 - 霧島火山の地形と地質

はじめに

 霧島火山は九州南部,鹿児島・宮崎両県の境に位置する第四紀の火山群の総称である.最高峰の韓国岳(からくにだけ:標高1700m)をはじめ,神話で有名な高千穂峰(たかちほのみね)など,20あまりの火山体と火口が北西-南東方向に長い30km×20kmのほぼ楕円形をした地域に集中してみられる.霧島火山は日本でも活動的な火山の一つで,御鉢(おはち)と新燃岳(しんもえだけ)では,歴史時代の噴火記録が数多く残されている.一方,霧島火山は日本有数の観光地の一つでもあり,四季を通じて多くの観光客が訪れている.したがって,霧島火山の噴火予知と防災はきわめて重要であり,そのためには,この火山の成り立ちをよく理解しておくことが必要であろう.

 この火山地質図は,霧島火山の活動史についての研究成果をまとめたものである.この火山の今後の研究だけでなく,噴火防災,観光,学校教育,自然観察などの資料として利用されることがあれば幸いである.


霧島火山周辺の地質

 霧島火山の基盤岩は,白亜系の四万十累層群に属する堆積岩類および更新世前期~中期の火山岩類(加久藤火山岩類)である.これらの岩石は霧島火山の南東から南にかけての地域と加久藤・小林両盆地縁からその外側の地域に分布している.霧島火山周辺では,これらの基盤岩を覆って,姶良カルデラから約2万5000年前に噴出した入戸火砕流堆積物が広く分布している.霧島火山の北側にある二つの盆地(加久藤盆地ならびに小林盆地)は,いずれもカルデラ(加久藤カルデラおよび小林カルデラ)と考えられている( 第1図).加久藤盆地には2万5000年くらい前まで湖が存在したと推定され,盆地内では加久藤層群と呼ばれる湖成層がみられる.


霧島火山の地形と地質

 霧島火山には,大浪池(おおなみいけ),韓国岳,新燃岳,御鉢など,山体の大きさに対して火口径の大きい火山体が多くみられる.このような地形は爆発的な噴火様式によって形成されたものである.火口湖が多くみられることも霧島火山の特徴である.火山体や火口は北西-南東方向の配列が顕著だが,これらと直交するように北東-南西方向にならぶ傾向もみられる.霧島火山南東部の二子石(ふたごいし)や高千穂峰付近には東西性の断層が推定されるほか,霧島火山の中央部に位置するえびの岳,韓国岳や大浪池には火口のほぼ中央を通って山体を北東-南西方向に切る断層が推定される.このような火山体の配列や断層の分布は,霧島火山の地下の地質構造や付近の広域応力場を反映したものと考えられる.夷守岳(ひなもりだけ)の北麓および韓国岳北西の硫黄山付近には山体崩壊による流れ山地形が認められる.

 霧島火山は,現在地表でみられる新しい火山体と,それらにほとんど覆われてしまった古い火山岩類(一部山麓部に露出)とで構成される.この地質図では,前者を新期霧島火山,後者を古期霧島火山とした.前者からはおよそ20数万年前より若い,後者からは120万から数10万年前の放射年代値が得られている.霧島火山の北側に位置する加久藤カルデラから約30万年前に噴出した加久藤火砕流は,およそ両者を分けるものである( 第2図).

 古期霧島火山の岩石は輝石安山岩が主体であるが,新期霧島火山の岩石はかんらん石玄武岩から輝石安山岩や角閃石含有輝石デイサイトまで変化に富む( 第1表).玄武岩および玄武岩質安山岩は,東側に位置する夷守岳,高千穂峰,御鉢などの火山にみられる.霧島火山の中央部や西部に位置する山体では,古期・新期をとおして輝石安山岩が主体である.斑晶としては,玄武岩には斜長石,かんらん石および普通輝石,安山岩類には普通輝石,シソ輝石,不透明鉱物があり,かんらん石を伴うものが多い.栗野岳の溶岩と御池から噴出した軽石(デイサイト質)には少量の角閃石の斑晶が含まれている.


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