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伊豆大島火山地質図(第2版) 解説地質図鳥瞰図
6:噴火活動の特色―防災上の注意

 伊豆大島ではおよそ100~150年に一度の割合で,カルデラ外山腹に堆積物を残すような大規模噴火を起こしている.明確な中規模噴火記録が残る19世紀半ば以降では約40年に一度の割合で中規模噴火を繰り返している.これらの噴火推移データを元に伊豆大島では噴火推移イベントツリーが作成され(火山噴火予知連絡会伊豆部会,2008),防災計画に反映されている.新期大島ステージのマグマ噴出率はカルデラを埋積した噴出物量が不明なため,火砕堆積物量(小山・早川,1996)で推定されており,S2 から N1噴火までが1.8 × 109kg/y,Y6 噴火以降が0.8 × 109 kg/yである ( 第7図:川辺,2012).

 ここ500年ほどの大規模及び中規模噴火では明瞭な前兆現象がないまま噴火が始まっている.噴出率が高い準プリニー式噴火や溶岩噴泉及び溶岩流出で噴火開始し,その後爆発的噴火・火山灰放出・三原山竪坑状火孔の再生後に終息という活動パターンを示すことが多い.多くの大規模及び中規模噴火では,竪坑状火孔が再生するときに爆発的噴火を起こし,大量の火山灰を放出している.爆発的であり,また予測も困難と考えられるので,注意が必要である.また降灰や火山ガスの放出もこの時期に活発で,農作物への被害などが生じやすい.側噴火もよく発生する.1986年噴火では山頂噴火の6日後に側噴火が発生したが,Y4 噴火のように側噴火がほぼ同時に発生することもある.側噴火はより居住地域近くで発生し,海岸付近ではマグマ水蒸気噴火を起こすため,特に注意が必要である.側噴火では事前に局地的な地震や地殻変動が起こると考えられるので,このような前兆に注意すべきだろう.

 伊豆大島で予想される最大の火山災害は,山頂でのカルデラ形成に伴う大規模な水蒸気爆発とそれに伴う火砕流である.S2 噴火の水蒸気噴火発生前には,複数箇所での側噴火があったほか,カルデラ形成前と以後では,マグマ組成にやや違いが認められることなどから,地下深部からの大量のマグマ供給がこの時期に起きていたらしい.このような噴火は,島の顕著な隆起,カルデラ直下での地震増加などを監視することで,ある程度の予測可能性はあるが,現時点で確度が高い予想をすることは困難である.

 伊豆大島山体には厚く降下火山灰,スコリアが堆積している.一般的に水はけは良く,常に水が流れている川はほとんどないが,2013年11月の土砂災害のように激しい降雨時に表層崩壊が発生し土石流となることがある.特に傾斜が急な斜面では土砂災害に注意が必要である.

 沿岸海底部の調査により,この海域に多くの側火山が存在することが明らかになった.特に水深の浅い海岸域では,激しいマグマ水蒸気噴火が発生する可能性があり,噴出物の飛散,降下が陸上部に及び災害が発生する懸念がある.実際,碁石浜,イマサキ,波浮,カキハラ磯周辺には,沿岸海底部でのマグマ水蒸気噴火によるものと考えられる噴出物が存在する.海底側火山は概ね陸上と同様,山頂から見て概ね北西‒南東方向に配列している.このため,北西沿岸沖,南東沿岸沖で特に側火山の噴火が発生する可能性が高い.これらの側火山は,伊豆大島中央部のマグマ供給系から地殻内水平移動によりマグマが供給されて形成されると考えられる(Ishizuka et al.,2014).多くの側火山列が沿岸海底部に存在することは,Y4 やS2 噴火のように側火口列が陸上から海底に達するイベントが繰り返し起きてきたことを示しており,長大な火山列形成に伴う噴火活動による噴出物による影響や道路交通網の障害などに留意する必要がある.


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